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02.赤い呪い


俺は人間の世界、すなわち大陸へ降りるのが好きだった。
仕事をさぼっているわけではない。
好奇心のままに行動するのも仕事の内だと考えている。

「あなたはおばあ様にそっくりね」

母さんはこんなことを言った。
そこまで俺はおばあ様に似ているだろうか。
見かけは父さんにそっくりだとおもう。
目と、髪の色以外は。

父さんはきれいな金髪なのに、俺は真っ黒。
まるで全てを飲み込んでしまうような黒。
目だって、そうだ。
僕は母さん譲りのこの運命のせいで、赤色しか見えない。
いや、正確には全てが赤色に見える、といったほうが伝わるだろうか。
俺の世界にはその一色しかないのだ。
幼い頃はまだ、色とりどりの世界にいた。
この運命、アゾートという運命を背負う者は、ある年齢に達すると、継承の儀式を行う。
先代のアゾートから、このアゾートという名前と、赤と、刻を操る砂時計が継承されるのだ。
それまでに名乗っていた名前は、このとき奪われてしまう。
取り戻すには、次のアゾートに継承するか、自らを殺すか、どちらかしかない。
だがそこまでして取り戻すメリットがないのでやろうとは思わない。真名を取り戻すと、世界に色が戻り、刻を操る力を無くしてしまう。
ただの力の無い『人』になるのだ。
自らを殺し、真名を取り戻したものは、…いや、俺は真名を取り戻そうと何て思ってない。
別にこの先をわざわざ思い出さなくてもいいじゃないか。
俺はこの運命を呪っても、恨んでも不服でもない。
ただ、当たり前だと思って受け止めている。

それだけ。

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