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「んっ…、……」
浮き上がる意識を覚醒し、目が覚めたらそこは見慣れた部屋。過去と同じ配置された家具に、見慣れた景色。
「……ただいま」
自然とその言葉が口から出てきた。
「さて、と…」
重たい身体を起こして、まずは自分の状態をチェック。時雨さんの術とはいえ、これからのことに支障があったらたまらないもんな。手を何度も開閉させて、肩や腰、首を回して確認。そのまま、外へと目を向けると、
「…夜。…まだ間に合うか…いや、間に合わせる」
ちゃんと過去の記憶はある。
俺が過去に戻って、主要人物たちに出会って干渉したこと。過去での行動が原作に影響を与えたことを。
そして、また俺のしなくてならない、すべきことが始まろうとしていること。
…やべ、今の恰好良くね?
「まずは着替えるか」
この恰好じゃなくて、過去に何度も着たあの恰好に。
「…すんげー、久し振りに感じるな」
クローゼットの中で一番目立つそれ。なんで気付かなかったんだろうな、昔の俺は。一番始めに、クローゼットを開けたってのに気づかないなんてどんだけだか…。
ハンガーから下ろして、手にとる。
「…」
暗殺戦術特殊部隊総隊長の服。ほぼ暗部の服と一緒だが、俺には着物を羽織ることにしている。
だって恰好良いじゃねぇの。
「んで、これもだな」
クローゼットの端に立てかけられているお面にも手を取って、眺める。狐のお面で、“黒影”と分かる印。
じっと見ていたが、すぐに暗部の服を、羽織を着て、お面をつけた。
「…おし」
視界慣れをして、精神を落ち着かせる。
俺がすることは、何一つ変わっちゃいねぇ。この世界で俺がすべきことはただ一つ。
「世界を変えること」
根本的じゃないが、これが俺のやらなくちゃならねぇことだ。
「暗殺戦術特殊部隊総隊長・黒影、いざ参らん」
その言葉を呟いて、俺は一瞬でその場から消えた。
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