過去篇 | ナノ


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「先日亡くなった暗殺武術特殊部隊の総隊長・玉藻の後を継ぐ者が決まった」

暗部の者共が集う地に言い放った三代目。三代目の背後には“根”の創作者・ダンゾウと―――

「……先代総隊長の意志を引き継いだ、黒影だ。以後よろしく」

新しく頂点の座に就いた俺の姿だった


「どうじゃ、カケル。新しい役割には慣れたかの?」
「三代目」

俺が暗部の総隊長に担ってから一週間。始めの二、三日は暗部内で不安やら心配な声が聞こえていたが、俺の言動で納得してくれる者が多数増えた。嬉しいことこの上ない

「まァ…、慣れたといえば慣れましたね。まとめ役をすること多かったから、大体は…」
「そうかそうか。それにしても、お主には色々な者を惹きつける魅力を持っておるのぅ…」

朗らかに、そして嬉しそうに笑って言う三代目。本当に彼は俺のことを孫のように、自分の家族のように見てくださっている。ま、それは里の皆と一緒だが

「俺に魅力なんてないですよ。俺は、ただのお人好しなだけですから」
「じゃが、あのナルトがカケルに懐いておるし、サスケも懐いておる。カカシのような自分から接しない者も、お主を慕っておる。全て、お主が今までした結果じゃよ」
「……そう、ですかね」

三代目の言葉は確かにそのとおりだった。餓鬼から理由もなく大人に、同い年に忌み嫌われているナルト。人見知りが激しく兄にしか慕わなかったサスケ。人を簡単に信じない、確固たる自分の意志を持っているカカシ。普段からその冷静さを表しているイタチ。
どれも、何故か俺を慕っていた
自覚はある。まだ20年も生きていない輩に説教みたいなことを言ってるお節介野郎に言われているはずなのに、本来なら嫌われる存在なのに、何故か彼等は俺を慕っている
時々、こんなのでいいのか?と思ってしまう

「俺は、自分の言っている事が正しいかなんてのは分かりません。なのに、俺は彼等に説教みたいなことを言っている。俺はいいことなんて言っていない。なのに、彼等は俺を慕ってくれている」
「誰かのことが正しいとは考えておらぬ。じゃが、その言葉が自分の胸に響いたのなら、その言葉は一生忘れぬ言葉となる。…カケルの言葉は、彼等にとって一生忘れぬ言葉となっただけじゃよ」
「……それなら、俺も嬉しいです」

少しでも、変わってくれるなら俺はこの世界に来た意味があるんだから。

「さて、と…。今からナルトと遊ぶ約束があるんで」
「おお、そうかそうか。ナルトにも、よろしく言っておいておくれ」
「りょーかいです」

ゆっくりと重たい腰を上げて、そのまま屋上を後にした。

「あ!やっと来たってばよ!!」
「悪ぃ!寝てたからよ」
「ったく、めんどくせー…」
「おはよう、カケル」
「ワンッ!」
「いつもなら一番早いお前がビリだとはなっ」

夕方。三代目との話のあと、俺は急いでナルト達の元へ向かった。そこには、ナルトだけではなくてシカマルやチョウジ、赤丸やキバが一緒に居た。全員、ナルトの友達だ。

「ちょっと今日気が緩んでたみてぇでよ」
「ったく…。で、今から何するんだ?」
「知らね。ナルトがなんか遊ぼうぜって」

シカマルに聞かれ、俺は素直に答える。本当に何も知らない。ただ、普通に学校が終わったら遊ぼうと朝一番に言われたことしか覚えてない。ナルトはというと嬉しそうにニコニコ笑っている。

「ナルト、どうかしたのか?」
「でへへへ〜!昨日、俺面白い場所見っけたってばよ!」

Vサインを俺たちに見せ、ドヤ顔を決めるナルト。いや、ドヤ顔されても困るんだが…。内心そう思いながら、ナルトに何処なんだと聞く。

「火影岩の後ろの森だってばよ!修行場になりそうだってばよ!!」
「!」

その言葉に、俺は目を丸くした。火影岩、といえば俺の勉強部屋がある。そして、その後ろには森になっているが…
森の中は…

「へぇ、面白そうじゃねぇの。あそこ、結構昼寝に最適だとは思っていたけどな」
「俺も。赤丸と今度散歩コースにいれようぜ、って言ってたばかりだぜ」
「ワンッ!」
「美味しい木の実とかなってないかなぁ〜」
「!!」

皆が皆、行く気満々だった。それぞれがナルトの言葉に賛成のようで、ナルトも嬉しそうに笑っていた。だが、それは危険なことだ。
言い忘れていたが、あの森の中には最近俺の修行相手が居る。人、ではなくて獣。俺が過去にタイムスリップして拾った小熊。だが、今では獰猛な大熊へと成長している。
唯一したっているのが、俺だけ。
それ以外の奴があの森に入れば、容赦なくあいつは人を襲い喰らう
ナルト達と会う?冗談じゃねぇ

「ま、待てお前等!!そこは三代目が行くなと行っていた場所だ!危険な場所だ!!」
「何言ってんだよ、カケル!!火影のじーちゃんのことなんて気にするなってばよ!!」
「そうだぜ。カケル、お前ちょっと三代目の言葉を信じすぎだぜ」
「だが、そこは今まで何人もの忍が行方不明になっている!危険だ!!」

行方不明、より死んでいると言ったほうが良かったのかもしれない。だが、まだこいつらは餓鬼で、まだ忍の“し”も知らない。好奇心だけであの森へ行けば…。
確実に、大熊に喰われる。

「大丈夫だってばよ!!行方不明なのは噂だろ!?気にすることねぇってばよ!!」
「そーそー。カケル、心配するなって」
「ワンワンッ!!」

そう言って、ナルト達は黙々と火影岩の後ろの森へ向かおうとしている。
だからこういう年齢の餓鬼は嫌なんだよ…!

「噂ではないっ!火影様が言っているんだぞ!?それがデマであれば、示しがつかない!!俺達はまだ未熟だ!チャクラのコントロールもままならない俺たちが行って危険な目に合えば…!!」


「ウゼーってばよカケル」


「!!」

一瞬にして、ナルトの纏う空気が変わった。いや、ナルトだけじゃない。シカマルも、チョウジも、キバも赤丸も皆俺に向ける視線に殺気を帯びている。
嫌な、予感がした

「ナル、」
「そんなに危険っていうんだったら、カケルは来なくてもいいってばよ。俺達は行く、カケルは行かない。それだけだってばよ」
「カケル、お前過保護も程ほどにしとけ。あんまり過保護過ぎると俺たち、呆れるぜ」
「行かないなら行かないっていいなよ」
「ワンワンッ!!」
「カケル、今のお前ウザい。心配しすぎなんだよ」
「お前等…!!」

俺を睨んで、そのまま森へと向かう彼等。俺はただそんな彼等を呆然と見ていて、ただただ時が過ぎていった。

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