ろぐ


俺のブログは自分で言うのもなんだが、人気がある。
サッカー選手の中では上位に入る。
と教えてくれたのは英士だったんだけど。

代表合宿中は本当にブログのネタに困らない。
昔からの顔見知りが多いのもあるし、久しぶりにチームメイト以外の写メをブログに上げれるのもその理由の一つだ。
昨日は久しぶりに英士と一馬と3人で撮った写メをブログに載せたら、コメント数がいつもより増えた。
ちなみに写メに写りたがった鳴海と高山が両端に見切れていたのはご愛嬌。
あいつら、突然入り込んでくるからほとんど見切れた写メばっかなんだよな、と思ったけれどそのままブログに載せた。
夕食中に撮った写メだったから、今日のご飯はハンバーグなんですね、とか、英士くんと一馬くんもっと載せてください、とか、今度は藤代くんと一緒に写真撮ってください、とか。
半数近くがリクエストだったんだけど、これって喜んでいいことなんだろうか。

まぁ自己満でやってるブログだし、ブログ書くのも楽しいし、コメントを貰えるのも嬉しいから続いている。
せっかくだからリクエストに答えようと、俺はホテル内を歩いていた。
藤代にするか、それともあんまりブログでネタにしたことのない椎名とか黒川あたりにするか。

「若菜、お前何一人で唸ってんだよ」
「え、俺唸ってた!?」

後ろから呼び止められ、しかも恥ずかしいことに指摘されてぐるりと振り返ると、水野が呆れた様子で立っていた。
隣には金髪の男。

「なんや、悩み事か?心優しい俺が相談乗ったろか?」
「お前になんて相談事打ち明けねぇよ」
「えー、中学時代俺の部屋までわざわざ濡れてやってきたタツボンの言う台詞ちゃう」
「うっせ!」

かしゃり。
水野が藤村の脇腹を殴った瞬間を激写。
ぽかんと俺を見つめる2人に、ネタサンキュ、と言ってひらり手を振った。
背中から焦ったような声が聞こえたけれど、携帯に保存された写真は俺の所有物だ。
好きに使わせてもらおう。

少し歩くと、騒がしい声がする部屋を見つけた。
確か…藤代の部屋か。
ちょうどいい。藤代の写メも撮る予定だった。

「お邪魔しますよー」

ノックはしなかったけれど、一声かけて部屋に入る。
オートロックなはずの部屋にすぐに入れたのは、ドアがちゃんとしまってなかったからだ。
ドアの入り口のすぐ近くに放り出されたスリッパが転がっていたから、スリッパが挟まっていたのだろう。
心優しい俺はそのスリッパをどけて、ちゃんとドアを閉めてやる。

藤代の部屋には、部屋の住人である藤代に加えて、高山、吉田、山口というメンバーがそろっていた。
みんなの視線を独占しているのは部屋の中央に存在している地デジ対応テレビ。
それに繋がっている線を辿る先にいる4人は、ぎゃあぎゃあと言いあいながらサッカーゲームに興じていた。

「おわ、ウイイレかよ!」
「あ、若菜!お前もやる?」

今気付きましたとばかりに俺を振り返った山口にひとつ「おう」と返事をする。
そしてぐるりとまわりを見渡して思う。
大して広くもない部屋にむさくるしい男が4人。
いや、俺を入れて5人。
まぁ代表合宿なんてどこみてもそんなもんだけど。
つーか、俺らの生活なんてどこにいてもそんなもんだ。
周りには男しかいないという生活にもう何年も身を置いてきた。
それが案外居心地がいいのは、こいつらに遠慮することがないからかもしれない。
女の子がいたら格好つけたくて空回りするだけだ。俺の経験上の話だけど。

「ちょ、お前今のは入れろよ!」
「日本の9番ユニが泣くぞ」
「うるせぇよ、次こそは入れる!見てろ!」
「藤代にゴールはやらん!」
「おー、高山かっこええこと言うてるやん。試合でもその気合い出しぃや」

ぎゃあぎゃあとうるさい部屋、それがだいたい写る位置に移動する。
ゲームに熱中しているから、俺の様子を不思議がるやつもいない。
誰一人カメラ目線なんていないけど、まぁいいだろ。
かしゃり、というシャッター音は藤代の「よっしゃあああああ」というでかい声に消された。

さて、ブログネタ漁りはまたあとで。
コメント要望に答えるという使命はまだ背負っているけれど。
俺はまず、今高山からゴールを奪った藤代を倒すという使命を全うしようと思う。


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11.02.19

結人のブログは女の子から人気が高いイメージ。
サッカー選手の写メがいっぱいだから。



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