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カツカツと、チョークが黒板にあたる音がする。
近くからはクラスメイトがノートをとる音や教科書のページをめくる音。
あまりにも聞きなれたそれらは、俺の耳に馴染み、そして何の感触も残さず通り過ぎていく。
眠たくもないのに出てくる欠伸を噛み殺しながら、少し騒がしい窓の外に目を向けた。

(あいつらか)

窓の外にいたのは、スペインとフランス、そしてプロイセンの三人だった。
あいつらは基本的に三人一緒にいる。
休み時間だったり、放課後だったり、寄るな触るなと騒ぎながらもいつも一緒にいるのだ。
別にそれが羨ましいとかではないが、おもしろくないのは確かだった。

外では体育が行われているらしい。
窓を閉めているため分かりづらいが、ギャーギャーと騒ぐ声が聞こえてくる。
あの三人は今は休憩中なのか、グラウンドの端の方で固まってこちらはこちらで騒いでいるようだった。

(あぁ、またか)

あいつらが戯れているのはいつものことで、それに対してなんだか面白くないと思うのもいつものことだ。
それなのに視線が外せないのは、そこにプロイセンがいるからか。
自分自身に嘘はつけないと言うが、全くその通りだと思う。
プロイセンが好きだと自覚したのはいいものの、それが実ることのない途方もない想いであるとも自覚している。
あいつは男で、俺も男。
フランスに言わせてみれば、それがどうしたという問題なんだろうが、常識的に考えておかしなことだということは承知済みだ。

はぁ、と吐き出したため息に気付いた教師がこちらをちらりと見たが、特に何を言うでもなくそのまま再び黒板に向き合った。
相変わらずよく書くもんだな、と窓から黒板に視線を移し、黒であったはずの黒板の大半が白で埋め尽くされていることに変な感心を持った。
書き写すのも面倒くさいので、後で適当にノートでも借りようと思ったところでチャイムが鳴った。
昼休みだ。
もう一度窓の外を見ると、挨拶を終えた生徒たちが校舎に向かって歩いているところだった。
簡単にプロイセンを見つけることができた自分が気持ち悪い。
そして相変わらずプロイセンの両隣りにはあいつら。

ふと、フランスが上を見上げ、にやりと笑ったがした。
いや、まさかなとは思ったがフランスがスペインに目配せしているのを目撃してしまうとやはり間違いではなかったのかと落胆した。
これで何もないわけがないのだ。
面白いこと、楽しいことが大好きなやつらだということは嫌というほど知っている。
あいつらから目をそむければいいだけの話だ。
だがそれができない俺はなんて馬鹿なんだろう。


フランスとスペインが、プロイセンの頬にキスをしたのを見た瞬間、俺は誓った。
あいつら絶対に許さねぇ!


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