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おれの最近の日課。
それは、五年い組の担任であり、おれの恋人でもある木下先生を観察することだ。

今は、クラス内で行われている朝礼の真っ最中。
教卓の前で、今日の授業日程を話す先生をじっと見つめる。

あ、目があった。

おれの視線に気付いたのか、一瞬、視線が交わる。
すぐに、木下先生の視線はおれから外れたが、おれの心臓はみっともなく高鳴る。
なんて単純な構造をしているんだろう。

おれはいまだに先生から目を離せず、見つめたまま。
そして、何ともないように喋り続ける木下先生。

だけど、実は知っている。
おれから視線を外すその瞬間、先生は右手で顎をさする。
その行動が、照れ隠しであるということを。
先生が自分でその癖を知っているのかどうかは分からない。
でも、ここ最近ずっと先生を観察していた自分にはなんとなく分かる。

学園内でも、どちらかというと強面で厳しいと有名な木下先生のそんな一面を知っているのはおれだけ。
そして、そんな一面を引き出せるのもおれだけ。

あぁ、なんて優越感。

つい、くすりと笑みをこぼすと隣に座っている兵助が小さな声で何、と聞いてきた。
「ごめん、なんでもない」
おれがそう言ったと同時に大きな鐘の音。

朝礼を終えて教室を出ていく木下先生を、窓から顔を出して呼びとめる。

「木下先生!」
「なんだ?」

歩みを止めて、こちらに振り向いた先生に言う。
「おれ、今日の実技の授業頑張ります!」
「当たり前だ、ばかもん!」

それだけ言って、また向きをかえて歩きだした先生の背中を見送る。
顔にやけてたらどうしよう。

「勘右衛門、今日なんか変」
そんな兵助の声がおれの後ろで聞こえた。


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09.10.30


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