※ツガサイ(=シズイザ)
文字どおり4人の人格がごちゃ混ぜになってしまっている

※よくわからない暗いオチ









「いたくしないって、ゆったのに」









泣く。

それは、むせび泣く。



世界の終わりを悲しむように、いつまでも、いつまでも






「いたくしないって、ゆった」





それは、咎めるものではない。ただひたすらに、事実を悲しむだけ。
どうしたらいいのだろう。
俺には、わからない。

サイケが涙を流すその意味など、わからない。


宥めるようにキスをした。
泣くな、泣くなと念じながら、だけどもそれを言葉にすることもせず、泣き続けるサイケを抱き寄せた。
わからない、わからないんだよ。
お前が何を悲しんでるのか、俺にはわからない。



「いたくしない、って」


「いたい」


「いたい、」




“痛いよ”




腕の中で震える小さな体なんて、力をこめたらばらばらに砕けて消えてしまうような気がして、ああ、俺は無力だと自分の腑甲斐なさを嘆いては、サイケの声を聞いた。





「シズちゃん、おれ」

「違う」

「おれだよ、ねえ、あいにきたんだよ」

「違う」

「おれは、シズちゃんに、会うために「違う!!」




違う、違う、違う。

違うよ、サイケ。


俺はマスターじゃない。
俺は、津軽だ、なあ、サイケ。
お前だって、“折原臨也”じゃない、お前はサイケだ。





「違う、サイケ」

「サイケじゃ、ない。シズちゃん、ねえ、なんでわかってくれないの?シズちゃん、おれ、シズちゃんが死んじゃってね、さびしくてね、シズちゃんにあいに来たんだよ?俺、は、だから、おれは」

「サイケ、折原臨也の、人格に呑まれるな。なあ、サイケ」

「へん、だよ。シズちゃん、なんで、浴衣なの?バーテン服は?ねえ、ねえ」

「もう、黙ってくれよ」





押し倒す。
何もない空間に、とさりと軽めの音が響いた。

ああ、お願いだ、
この声が届くなら、この願いがかなうなら、

頼むから、



「俺から、サイケを盗らないで…」



俺のサイケを、消さないで




首筋に落とした口付けは、サイケを呼ぶような


でも、けらけら笑ってるこいつはちっともサイケじゃない。
お願いだから、サイケ、戻ってこいよ。

脱がせた純白コートの隙間から露になった肌だって、雪みたいに白い。そんなのずっと前から知ってる。俺だけが、知ってた。



「ぁ、ん」

「……サイケ、」


胸の突起に吸い付く。
それは白い白い肌には浮くくらいのほんのりとしたピンクで、そんな色も、感触も、全部、サイケなのに


なのに、なんで





「ん、ぁッ…シズ、ちゃん」




なんで、俺の名を呼ばない。

呼んで、

呼んで、呼んで、


俺を、呼んで






ちゅ、ちゅ、吸い付いては放すを繰り返しながら、俺であって、俺でない名を聞く。
うわごとのように、サイケは、シズちゃん、シズちゃんと呼んで、そのたびにもうやめてくれと耳をふさぎたくなる衝動にかられた。

きっと、全部終わればサイケは思い出してくれる。
癒着した折原臨也の意識だって離れていくはずだから。

そんな根拠のない希望ばかり携えて、サイケの小さな体に何度もキスをした。


「ふ…ぁ、……ね、ぇ」

「あ?」

「キス、したい」





普段なら絶対に言わない言葉。
いや、言ったことはあるのかもしれないけれど、こんなにも妖艶なものではなかった。

胸が痛い。
ぎゅうぅと、締め付けられるような、

そんな顔するな、そんな目をするな
お前はサイケだ、なんでそれがわからない

唇を重ね合わせた。
丁寧にそれを食んで、吐息をわざと漏らしながら、舌を差し出す。
何度か舌先で小さな薄い唇をなぞれば、自主的に差し出される熱い舌。
それに噛み付くようにキスをして口内に舌をねじ込めば、ぐるりと伸びてきたしなやかな腕が俺の頭を抱いた。



「ん、ん…」

「……は、…」



交錯する。
体が、舌が、想いが、現実が、不運が、死が、
言葉が、





「愛してる」



引き離した唇から漏れた言葉はそんな浅はかなもの。
愛してるよ、サイケ
誰より、この1と0の世界で出会ったお前だけを、愛しているよ



「やっと言う気になったの?」





何のことだろう。
何を言ってるんだろう。
否、答えなど知ってた。
当の昔に、知ってたのだ。


ズボンと下着を一緒におろす。
恥ずかしいよとサイケは笑ったけれど、実際そんなこと考えてないのだろう。
ちっとも太くない太ももを掴んで足を開かせる。
ひう、と変な声で臨也…サイケは、ないて



もう、わからない。
お前は一体、誰なんだ?
俺のサイケを返してよ、
返して、


固く反り始めたサイケの性器を口に含む。
このくらいの動作なんてしょっちゅうやってたから問題はない。
見上げれば目が合ったその顔がかあぁと紅く染まる。
羞恥心かよ、一丁前に



「ひ、んッ…あ、ふぁ、あ」

サイケ、サイケ、

心の中で何度も呼ぶ。
呼ばれない俺の名はふらふらと寂しそうに凍えているようだった。


愛してるのに、

こんなに、



舌先で先端をチロチロと舐めては口に含んで吸い上げる。ぐりぐり、少し強めに尿道に舌を押しつければ、面白いように華奢な腰が跳ねた。
ひくりとなった喉に目を細めては、口淫を繰り返す。いつもそうしていたように、早く目が覚めるように、


「ん、や、ああッ!」



強めに吸い上げて口を放せば簡単にサイケが果てた。
ぶちまけられた精液を頭からかぶって、頬についた少量だけを親指で拭い去り、呼吸の調わないサイケに口付けて。
押しあてるだけですぐに放す。

上気した顔はなんとも淫らだった。
腰に手を回したとき、サイケが思い出したように呟いた。




「こんどは、痛くない?」












*






その記憶はあった。

マスターが折原臨也を初めて抱いた夜に、二人は約束を交わしていた。


「痛くしない?」

「ああ、しねえ」

「………嘘つき」


そんな短い会話の中で交わされた小さな約束を、マスターは必死に叶えようとしていた。
毎回、毎回
でも、それは無理な話で、最後には折原臨也に

「痛くしないって言ったのに」

と咎められて終わって。




それでも、幸せだったのだろう。
だって、マスターたちの真似事として事を始めた俺たちですら、いや、俺、ですら、こんなにも“幸せ”だったのだから。




それが脆くも崩れ去ったのは1週間程前のこと。

マスターが、死んだのだ。
俺は詳しいことを知らなかったけれど、マスターを失った折原臨也が壊れてしまったことはわかった。
そして、それを傍で見ていたサイケも、悲しんで、悲しんで、悲しんで
挙げ句、折原臨也と同調してしまった。

現実の折原臨也がどうなったかは知らない。
けれど、わかることは、マスターが死に、サイケも消えようとしていること。


マスターの死を悲しんだ折原臨也が、マスターを追い求めるあまり、オリジナルから生み出された俺を求めて、サイケを消し去ろうとしている。

やめて、やめてくれ
サイケを返してくれよ

なれるものなら代わりにだってなるから、俺からサイケを奪わないで






「ぅ、あッあ、あん」

「…、…は」




突き上げて、突き上げて


ああ、痛くないだろうか。
終わったあとにまた、痛くしないって言ったのにと、泣いたりしないだろうか。


折原臨也が言ったように、
サイケがそれを真似たように、


痛くしないよ、そんなかなえられもしない約束が、俺とサイケ、マスターと折原臨也、そして、俺とマスター、サイケと折原臨也。
結び付けて、今も放さない。放してくれない。



「サイケ、ッ、……臨、也」






逃げられない。

もうどこへも。



俺は、誰だろう。
こいつは、誰だろう。
もう、よくわからないけれど遠くのほうで聞き慣れた声が「つがる、」と呼んだ気がして、


乱暴に突き込むと目の前のそれの中へ、白濁とした精液を吐き出した。






体を引き離す。
は、は、と浅く熱い吐息が絶えず口から零れた。
サイケもぐったりと紅い顔して俺の顔を見上げて、にっと笑うと


「痛くしないって言ったのに」




そう、言った。




――――――――
まーた分類微妙なものを←だからね、ツガ(=シズ)サイ(=イザ)なんだよw
新しいジャンルb
デリ雄いるくらいだから許されると信じてる


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