※臨也は死んだ設定

※仮面をつけているのは津軽島




仮面を付けた俺は笑う。
おかしいくらいに俺は笑う。
幾度も俺は俺に暴力をふるうけれど、仮面はにやにや、笑ったまま変わらない。



空調のききすぎたその部屋に、死体と、俺と、俺がいた。
殴る。蹴る。笑われる。笑われる、笑われる。
罵って、罵られて、罵って、罵って罵って、罵られて。
俺は俺を蹴り付けて
ぶっ飛んだそれは派手に机上の紙類をぶちまけて、それでもなお笑っている。



仮面は笑う。
温かみのない冷めた笑顔で俺を見る。








臨也は眠るように目を閉じて、『それ』を抱き締めていた。

だのに腹部には綺麗な鮮血が咲いていて、『それ』が手にした鋭利な刃先から滴る紅い液体。

それを眺めた俺は、笑った。
吐き出すように。誤魔化すように。



振り返った『それ』も笑っていた。
白い仮面のその中で、くすくすくすくす笑っていた。
仮面は切れ長の三日月のような笑い顔。だけど右目のその下に、一粒涙が描かれていた。




なぜ笑う。
なぜ泣く。
なぜ、泣く、笑う、笑った、泣いた?


なんでだ。





こんな奴を愛したから、臨也が死んだのか。

こんな奴のために臨也は死んだのか。


眠る臨也の呼吸音を、最後に聞いたのはいつだったのか。



臨也は死んだ。
この、不完全な化け物を愛して死んだ。


ああ、俺を愛して死んだのか。







何も跡を残さず消えるのが、折原臨也だと呼ぶのだと、俺は勝手に思っていたのに

こんな化け物を残して逝きやがって。
残された寂しさを嘆く感情なんてものまで与えて逝きやがって。





浴衣姿の『それ』は泣く。

笑う仮面の一粒の涙の如くひっそり死を嘆く。





抱き締められた『それ』は、幸福だった。



産み落とされた理由など、なかった彼には至福だったのだ。


愛されていることが意味になると。

愛していることが事実になると。




彼の口を割いて出た歌声は、死んだ男の笑顔であった。

臨也は愛した。

自分が作った俺を愛した。

自分が作った機械を、愛した。




俺が、愛していたのに

臨也を愛していたのに


ああ、そうだ

俺が黙ったままだったから、臨也は狂ってしまったんだ。


愛していたよ、

愛していたのに、

こんなにも愛しく君を







臨也を愛していいのは俺だけだ
臨也を殺していいのは俺だけだ
なのに俺が、俺が臨也を殺したのだ
俺が、俺が俺が、俺が、俺と言う名の、歌う機械ごときが臨也を殺した









『それ』は泣く。




笑う仮面のその奥で、ひっそり死を嘆く。


溢した涙に俺は笑うけれど、それは仮面の笑顔なのか、それとも


もうその事実はわからない



だけど







『主人が殺せと言ったんだ』





言い訳がましく一度開いた俺の口。


知ってるわかってる。
機械を愛してしまったけれど、それは俺であって俺であり、俺であって俺でなかったから、臨也が嘆いた事実だって俺は知ってる。





ああどうして


あのときそばにいけなかった

どうして好きだと言えなかった

どうしてくたばれと言ってしまったんだ



臨也を殺したのは俺でない俺。


そしてそうさせたのは紛れもない俺。





俺のせいだと言うのに、俺は俺を壊そうと殴り続ける。




『ああ、主人を殺したのはお前だ。俺はこんなに愛していたのに、愛して』







笑うな、笑うな

俺を笑うな


泣くな、もう嘆くな


責め立てられる俺の心はこいつのように泣き笑っている。
殺したのは俺、なのに俺でない


奴を殺していいのは俺だけだと言うのに










(愛してた)


(ああ、でも)


(もう全部遅かった)





――――――――
短く

病んだ臨也と残されたへいわとつがる



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