「己の命よりも」





「君がいると、他の生徒たちがやる気を失くすんだ。」





 冷たく突き放すような言葉を発する男は、ビシッとスーツを着込んでいた。いかにも頭が堅そうな顔つきである。

 高すぎる知能は時として妬み、僻み、そして排除対象になりうる。







 暇さえあれば工藤邸に足を運ぶのは警察学校を卒業しても変わらなかった。決して双子の父である優作氏に言われたからではなくて、いつからか双子と過ごす方がなによりも楽しくなっていた。暇さえあれば独身寮から工藤邸へ、警視庁から工藤邸へと足を運び双子と一緒に過ごしていた。

 双子というのは、工藤家の新一と理世のことだ。萩原と松田が高校生のときに誘拐されそうになっていた理世を助けたことから工藤家には懇意にさせてもらっている。その双子は性格が全く違う。新一は憧れているシャーロック・ホームズのような探偵になるべく「修行だ!」と言って、松田と探偵ドラマを見て犯人を推理している。理世は萩原の膝の上に乗って本を読んでいた。双子はシャーロキアンであるものの、新一が将来探偵を志しているのに対し、理世は探偵になろうとは思っていないようだ。そんな理世は萩原でもあまり理解できないような専門書を読んでいる。





萩原「理世ちゃん、なにかあった?」

『なんでそう思うんだ?』

萩原「いつもより元気ないから。」





 理世はパタンと本を閉じた。青い大きな瞳に萩原が映る。





『言われたんだ。』



『私が居ると他の生徒がやる気を無くすんだと。』





 息を呑む音がする。それが自分だってことに気づいたのは随分後だ。理世はなんてことないように言った。言葉を失う萩原に、理世は困った様に笑った。

 理世にとって、「他人から避けられること」というのは普通なのだろうか。優作氏が言っていた"日本は普通じゃない人間を排除する傾向にある"ということ。それがこれか。学校の先生が放った拒絶の言葉。少し元気がないのは、その言葉に傷ついたからだ。ふつふつと怒りが込み上げてくるのを感じる。優作氏が危惧していたのはこれだったのだろう。





萩原「悲しかった?」

『…こういうのは慣れているから大丈夫だ。』

萩原「理世ちゃん、それは慣れちゃいけないんだ。他の人間と少し違うからってその先生は理世ちゃんを蔑ろにしている。」

『じゃあどうすればいいんだ?』

萩原「誰かに話して。悲しみも苦しみも寂しさも分ければなんてことないだろ?一緒に悲しんで、苦しんで、そして考える。」

『考える、』

萩原「そう、その悲しみや苦しみを解決するために。」





 理世は大きく頷いた。

 届いただろうか。人間、誰しも孤独かも知れない。理世はさらに輪をかけて孤独の淵に立ってしまうかもしれない。萩原は天才ではないから、理世の気持ちはわからない。だが、人は独りでは生きられない。"もう"誰かを信じられなくなって絶望してほしくなかった。





萩原「とりあえず、そんなことほざいた先生の名前教えてくれる?』



『ひっ』

新一「研二にいちゃんがこえー顔してる!!」





 普段温厚な萩原の怖い顔に理世が小さく悲鳴をする。ドラマを見ていた新一がそれに気づいて告げ口するように叫んだ。





 世界がどんなに残酷でも、君の味方であると、届いただろうか。



***



本間「本物の人間が人形にされちゃうお屋敷があるんだって!」

『それ、また都市伝説じゃないだろうな?』





 えへへと頬を掻いて笑うのは理世のクラスメイトの本間芦花ろかである。彼女は都市伝説などのオカルトが大好きで、東都に出回っている都市伝説をどこからか仕入れては話題にしていた。





本間「あ、今日うちのマンションで隠れんばするんだけど理世ちゃんも来るよね!?」

『いや、私は』

本間「来るよね!一緒に帰ろうね!」





 断ろうとするも、押し切るように放課後の予定を決められてしまった。芦花は嬉しそうに笑うと自分の席についてしまった。彼女は天真爛漫という言葉が良く似合う女の子だ。大人たちが理世を持て余し、それに勘づいた子供たちも理世を遠ざけた。そのことを悟り、己からも他人と関わろうとしなかった。それなのにも関わらず、芦花は理世にシツコく話しかけてきたのだ。理世が空返事でも嬉しそうに「返事してくれた!」と笑ってくる女の子だ。そんな芦花にいつしか心を開いていった。

 芦花が住んでいるのはタワーマンションだ。同じタワーマンションがすぐ近くにある。ここに住んでいる子供たちと遊ぶようで、放課後10人くらい集まっていた。この広いマンションで10人を探すのは骨が折れそうだ。『鬼じゃなくてよかった』と理世は心底思った。



 しばらく隠れていると変な男を見かけた。



 でっかい紙袋を持ち、小汚く、帽子で顔を隠している。そこはかとない薄気味悪さが感じられる。このタワーマンションの住人でもなさそうだ。理世は不審者に遭遇しすぎて両親に携帯電話を持たされていた。パステルピンクのキッズケータイはGPS付きで、お尻についている紐を引っ張ると防犯ブザーで両親と知り合いの警察官が飛んでくる仕様になっている。報告したほうがいいのだろうか。でもまだ何もされてないし…。でも、松田は言っていた「やられてなくてもやりかえせ」と。それが今この時か??理世は気付かれないようにそっとその場を離れ、隠れんぼしていることを思い出し再度隠れた。







 暫くするとタワーマンションの周りが騒がしくなった。

 ぞろぞろとたくさんの足音が終わると、揃った足音が聞こえた。理世が隠れていた場所の近くでその足音は止まる。話し声が聞こえ、いよいよおかしいと思い理世は隠れていた場所から顔を覗かせる。20階と書かれた中廊下に武装した警察官が集まっていた。防弾盾にはPOLICEと書かれている。確か、あそこには不審者がいたはずだ。その中心にいる警察官を見ると理世は走り出した。





『けんじさん』

萩原「えっ、理世ちゃんなんでここに!?」

『みんなで隠れんぼしていたんだ。けんじさんは?』

萩原「2つのタワーマンションに爆弾が仕掛けられて、こっちが俺でもうひとつが松田が担当してる。それよりもはやく避難を」

『でもけんじさん、防護服着てないのに解体するの?』





 ピシっと、時間が止まったようにけんじさんは動きを止めた。理世はちらりと置いてある防護服を見る。

 止まっているタイマー、防護服を着ていない萩原、避難する住民。





『民間人を人質にお金を要求してきたのか。』

「えっ、なんで」

『簡単な話だ。まず見た目に反して慎重なけんじさんが防護服を着ていない。』

萩原「見た目に反してって…」

『防護服は約40kgの重さがあり、一人での着脱は不可能、そして内部の酷暑で5分以上の着用が不可能。けんじさんの性格を考慮すると防護服を着ないで爆弾解体をすることはありえない。そこに防護服が置いてあるのがその証拠だ。となると、金銭を受け取る代わりに民間人の避難が終わるまでタイマーを止めるという取引が成立したんだろう。そして、けんじさんたちはマンションの住民の避難が完了するまで爆弾の前で待機していたことが考えられる。』





 −−−ゴクリっ 誰かの固唾を呑む音がする。まるで現場にずっといたのではないかというほど次々と当てていく理世に爆処の隊員たちは戦々恐々としている。現在の段階で、目の前の爆弾が爆発するとはありえないと考えているだろうし、この状況下で防護服を着る意味はないだろう。犯人との取引が成立している今、マンションの住民を安全な場所に避難させてから解体すればいいのだ。避難が完了するまでトラップの内容を確認していたのだろう。





萩原「さすが理世ちゃんだね。それが分かってるならはやく避難を、」

『けんじさん、この世に絶対なんてない。』

萩原「理世ちゃ、」

『犯人がタイマーを止められるということは動かせることと同義だ。今回のヤマはおそらく一課の特殊犯が担当していると考えると、特殊犯と犯人の間にトラブルが起きないという絶対はない。例えば、犯人が取引の約束を守らないとか、犯人を捕まえようと無理な捜査をして犯人が逆上しタイマーを起動させるとかね…。となると、』

萩原「今すぐにでも爆弾を解体したほうがいいのか。」

『ああ、それに嫌な予感がする。』



 萩原はいつになく真剣な顔をすると、防護服を着せてもらう。

 爆弾をソッと覗く。水銀レバーがある。爆弾を処理するとき、液体窒素で爆弾を凍らせ、安全地帯の土中等で爆発させて処理するのが一般的だ。しかし、水銀レバーは液体窒素での冷却は不可能。直接解体しなくてはいけない。

 萩原は理世の傍を離れ、爆弾と向き合う。「2つの爆弾をそれぞれタワーマンションに設置し、民間人を人質に金銭を要求した」これはかなり大きな計画だ。タイマーを止められるなら、動かすことも可能のはずだ。もしかしたら、これを聞かれているかもしれない。だとしたら、理世の避難によりも爆弾を無力化するのが優先だ。











萩原「理世ちゃん」

『…けんじさん』

萩原「解体終わったよ、みんなのところに行こう」





 いつの間に終わったのだろうか。ぼーっとしてしまっていたようだと気づいたのは萩原に声をかけられてからだった。萩原は優しく笑い、理世に手を伸ばした。その手を取ると抱き上げられる。防護服を着ていたからか、萩原の体温が高い気がする。ぎゅっと隊服を握ると、抱きしめる手が強められた。エレベーターが止まっているため、1階まで階段で降りなければならなかった。機動隊で鍛えられた萩原は1人の子供を抱っこしても余裕そうだった。



 他の隊員の報告によると、犯人の一人が交通事故でなくなったらしい。というと、それがわかったのも先ほどタイマーが動いたことからだ。理世はぼけっとしていて気づかなかったが最後のコードを切る寸前にタイマーが生き返ったのだ。すぐに切ったから大事には至らなく、タイマーが復活する前に犯人の一人が交通事故にあったため、もう一人主犯格の人間がいるだろうとの結論になったようだ。その主犯の相棒は、警察に電話してきたらしい。それを逆探知した警察が捕まえようとしたところ、逃走。逃げた先が車道だったため、車に轢かれ死亡してしまった。





『つまり、相棒を死なせた警察に逆上してタイマーを復活させたのか。』

萩原「あのまま待機していたら解体が間に合わなかった。あの火薬量、あのフロア全体が吹き飛んでた。」





 理世も相違なかった。あの場にいた隊員は即死だっただろう。





萩原「理世ちゃんは俺の命の恩人だね。」





 にこりと人好きのする笑顔に、なぜだか頬に涙が伝った。それに驚き慌てふためく萩原。自分でもなんで泣いているのかわからなかった。誘拐されたって刃物を突きつけられたときだって泣いたことはなかった。いきなり泣かれて、しかもあまり泣いたことのない子供に泣かれて萩原は大層焦ったようで、大きな手で頭を撫でられる。背中をさすって、名前を呼んでくれる。萩原の鼓動を確認するように首筋に顔を埋める。そうか…、





『私は、けんじさんが死んでしまうかもしれないのが怖かったんだな。』

萩原「え…?」

『"一緒にいてくれる"って約束したのに、いなくなってしまうかと思ったんだ…』





 理世は服の中にしまっていたロケットペンダントを取り出し、ぎゅっと握る。萩原はそんな理世を強く抱きしめる。





萩原「大丈夫、絶対離れないよ。」







松田「お前らなあ!!無線で萩と一緒にいるって言われたとき俺がどんな気持ちでマンション見上げてたかわかってんのか!?」





 松田はさっさと防護服を着ないで爆弾を解体しなかった萩原を殴ったあと、理世の肩を掴んで叱った。まるで鬼のような形相でするどい八重歯を見せて怒る松田に、唇を尖らせ上目遣いをする。効果的面でぐっと堪える松田。松田は理世のこの顔に弱いのだ。「確かにお前が逃げ遅れたおかげで萩は助かった。だが防護服も防弾盾もない民間人の理世があの場にいていいわけないんだ。これからはちゃんと異変を感じたら俺らの誰でもいいから報告、そして自分の身を優先しろ。わかったな。」というと、ぎゅっと抱きしめられる。まるで理世が生きていると実感するように。少し苦しかった。







 事情聴取で、不審者を見たことを証言したが写真などの物的証拠がなかったため参考程度にしかされなかった。理世の携帯電話はキッズケータイのためカメラはついていなかった。電話とメール、GPSに防犯ブザーしかついていないのだ。

 日本でも、証言能力は個別的に判断されることになっている。例えば、奈良県奈良市で起きた少女誘拐殺人事件では、被害者が犯人とされる人物の車に乗り込むところを複数の児童が目撃した。児童の供述では犯人はやせ形であるとされ、車の色は白と紺色に分かれたが、逮捕された被疑者は体格が良く、車は緑色であった。これは子供の証言が曖昧だとされたため大事にいたった。曖昧な理由は自発的な情報量に制約があることと重要な情報が欠けていることが多いことにある。

 まだ東都では子供の証言能力に信用はなく、理世のように参考程度にしかされないことが多い。例え、理世がギフテッドと言われても物的証拠を揃えなければ、信じて貰えないのだ。





『なんだか悔しいな。』





−−−カラリ、 ペンダントを触る。小学生の理世にはまだ大きく、長すぎてチェーンが余っているそれは金色に輝いていた。





***



 工藤夫妻も新一もいない工藤邸はかなり静かだ。リビングには理世と萩原が松田の前で正座している。ヘラヘラと笑っている萩原をよそに理世はなんだか心ここに在らずである。





松田「はあ…」

萩原「じんぺーちゃん」

松田「うるせっ、危うく俺だけ残されるところだったんだ。」





 電話に出ない萩原、理世の名前を叫ぶ少女の声に焦燥した。最悪の事態を想像してしまった。もしかしたら、マンションに理世が取り残されているのではないのか。萩原が電話に出ないのは解体に時間がかかっているからか。不安と焦りの中、一人の隊員の解体完了の報告と、一般人がまだ取り残されていたことを聞いた。その一般人はやはり理世で、松田は安堵と共にふつふつと怒りが込み上げてきた。

 松田が解体した爆弾には水銀レバーはなかったが、盗聴器と遠隔操作ができる仕組みになっていた。萩原の隊にいる隊員に聞くと、理世が現れるまでタバコを吸って避難完了まで待機していたようだし、最後のコードを切る寸前にタイマーが生き返ったようだ。もし、理世があの場にいなかったら?解体が間に合わず爆死していたのではないだろうか。防護服なしであの火薬量を見ると、あのフロア全体を吹き飛ばすほどの火力はあったはずだ。





松田「班長はまだ所轄勤務だし、ゼロとヒロの旦那は音沙汰ねえし…」

「『ごめんなさい。』」





降谷「本当だぞ。事件に巻き込まれたって報告をされた俺たちの身にもなってくれ。」

諸伏「でも無事で良かったよ。」

伊達「帰宅途中にいきなり車に押し込まれた俺の身にもなってくれ…」





 ガチャリとリビングのドアが開き、平然と入室してくる3人の男。松田は目を見開いた。その瞬間、松田と萩原の「はああああああ!?」という叫び声が鳴り響いた。







 諸伏と理世が、安心で鳴り響く俺の腹の虫のために晩飯を作ってくれた。6人で飯を食うなんてそんな前のことではないのに久しぶりな感じがした。どうやら降谷は警察庁、諸伏は警視庁公安部に配属され、潜入捜査官としてやばい組織に潜入しているらしい。もし、自分が警察官だとバレると自分の周囲の人間にも被害が及ぶかもしれないということで俺たちには安易に連絡ができなかったという。水クセェぞと萩原と一緒になって「ウメボシ」をする。痛いと俺の腕を叩く諸伏。隣では降谷も萩原の腕を叩いている。伊達はそれを笑ながら見ている。なんだか警察学校時代に戻ったようで嬉しかった。







萩原「協力者?」

伊達「確か公安の捜査官が協力関係を結んだ民間人のことだよな?」

降谷「ああ、さすが班長だな。」

諸伏「理世ちゃんは俺の協力者なんだ。」





 諸伏の言葉にvに視線を向ける。こいつ、俺たちに黙ってたのか。確かにこいつのコンピューター関係の強さ、大人が舌を巻くような知識量、柔軟な思考、観察眼を兼ね備えている。降谷たちはそれを出会ったときの指名手配犯の事件で見込んだのだろう。

 話の渦中の理世は俺たちの会話を静観していた。何かを考え込むような理世の姿はなんだか昔を彷彿ほうふつとさせる。松田はこの懸念が現実にならないことを祈るばかりだった。







***



諸伏「聞いたよ、刑事課によく顔を出しているんだって?」





 家路を急ぐ車の中、男の優しい声が響いた。今日は良く晴れていて、月が美しく輝いていた。今日は満月だった。満月とは、月と太陽の黄経(天球上の天体の位置を表すための天球座標系の一種)差が180度となることをいう。望ともいう。太陰暦(月の満ち欠けの周期を基にした暦)では15日か16日であることが多いので、満月の日の晩を十五夜と昔の人々は呼んでいたという。あ、話がそれた。

 タワーマンション爆弾事件から一週間経った。理世は事件から幾日して、父親に連れられ捜査一課の捜査協力のため現場に連れて行かれた。そこで物の見事に父より先に真相を突き詰めたことから、よく捜査に協力するようになった。まあ多忙な父の替え玉だろうけど。

 萩原と松田の警察学校時代の同期である諸伏景光とはかなり早い再会した。切長の瞳に、卒業してからできた顎髭はとてもじゃないが似合っていない。体も在学中とは異なりがっしりしている。だが、景光の優しく人一倍正義感の強い性格は変わっていないようだ。





『協力者としては不都合か?』

諸伏「そう言う意味で話題にしたんじゃないよ。捜一、しかも強行犯だろ?理世ちゃんが危ない目に遭うんじゃないかって心配でさ。」





 理世が景光の協力者になったのは、かなり最近のことだ。音信不通になっていた男が突然現れたときは心底驚いたものだ。10歳の子供を協力者にするなんて上司から色々言われただろうに。





『そんな首をツッコまないさ。私は新一と違って運動神経は良くないから。』

諸伏「ははっ、有希子さんから聞いたよ。他の科目は5なのに、体育だけ3だったって。」

『母さん…余計なことを…』





 理世は運動神経がすこぶる悪かった。ボールを投げれば真下に直撃し、マラソンはいつも最下位、プールでは溺れる。あまりにも悲惨過ぎて先生にも無理するなと気を使われるほどだった。





諸伏「君は俺たちのお姫様なんだから、あんまり無茶しないでくれよ?」

『そういうのは彼女に言ってやれ。』

諸伏「うっ…心が痛い…。」





 「傷ついた〜」とオーバーにリアクションをする景光に理世は笑った。景光をはじめ、萩原も松田も降谷も総じて彼女がいない。伊達は在学中にすでに美人の彼女がいた。性格もいいし、顔も文句ないほどいいのにおかしいと思うほどいない。私に隠してるのか?でも彼女いたらこんな頻繁に遊んでくれるとは考えられなかった。イケメンすぎてできないとか。それともいい女性に巡り会えていないとかだろうか。





諸伏「最近研究のほうはどうなんだ?」

『まあまあかな…。結構模索しているんだけど、発表まで三年はかかりそうだ。』

諸伏「やっぱりプログラムってなると難しいのか?俺そっち方面は全然わからないからなあ。夏休みに作ってたやつは表彰されてたよな?」

『あー、あれは発明創意工夫で夏休みの宿題だったから。』

諸伏「えっ、あのクオリティで夏休みの宿題なのか!?」

『ただの自動走行するAI搭載の監視カメラだよ。そーいえば、父さんが量産して日本の治安のために日本中に普及してもいいか聞かれたかも』





 理世が夏休みの宿題で作ったのは、AIが搭載された空中を自動走行する監視カメラだ。犯罪が横行する米花町で杜撰なセキュリティと監視カメラがあまりにも少ないのは致命的だと考えていた。隣に住む阿笠博士の協力の元作成された。夏休み明けに宿題として持っていくと表彰され、それがお偉いさんの目に止まり、鈴木財閥協力の元に量産することになったのだ。数ヶ月後には東都を始め全国に普及されるようだ。全て父さんに頼んだから詳細はわからない。





諸伏「そうか、そのうち日本中で理世ちゃんの発明したものが出回るのか。楽しみだな。」





 本当に楽しみにしてくれているようで、今にでも鼻歌を歌いそうな景光に理世は口角を上げる。



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