ゲイビ上等! 10

「ちょ、先輩…っ」
「ん?ベッド行く?」

時刻はそろそろ夕時で、そう言えば昼飯も食べてないことに気が付いた。
その瞬間、ぐぐーっと盛大に腹の虫が鳴き、俺達は思わず顔を見合わせる。

「あっ、や、これはそのっ」
「ぶっ、くくっ。先に飯にするか。ってか先にシャワーだな」
「…うす。てか先輩、この荷物どうすりゃいいの?その、俺の部屋とか…」

話しながら、取り敢えず脱いでしまった下着とズボンを履いた。
同じく脱いだ学ランはそのままに、学ランの下に着込んでいたパーカーの着崩れを直す。

「取り敢えずシャワー浴びて来い。なんか作っておくから。部屋には食事の後に案内するよ」

凌先輩はそう言うと、恋人ごっこの延長なのか、俺の額にキスをした。


「じゃあ、先輩。お風呂、お先に頂きますー」
「おお、ゆっくり入れな」

先輩の声を背後に聞きながら、さっき履いたズボンと下着を脱いでいく。

「…はぁー」

湯舟にお湯を張るのには時間が掛かるから、取り敢えずはシャワーでだけで済ませた。
凌先輩はコンドームを使ってくれたから、精液を掻き出さなくてもいいんだけど。
ただ、念のために温めのシャワーで中を洗った。
ローションを大量に使ったし、久しぶりにねっとりとした本格的なエッチだったしね。

なんか満たされた気分になるのは何故なんだろう。
恋人ごっこだったからかな。
やっぱ俺、恋をしてみたいのかも知れない。

思えば小学生の頃は女の子をいじめてばかりいたし、中学生の頃は粋がって女の子を遠ざけた。
高校は殆ど男子校状態で周りには男しかいなくて、思えば俺はちゃんとした恋をしていない。

その結果、男に好かれ(襲われ)て犯されるってどうよ。

「虎太郎。着替えっつか鞄、取り敢えずここに置いとくぞ」

下着の替えが入ってるよなと俺に聞きながら、先輩は洗面所で何やらごそごそやっていた。

シャワーから上がると、柔らかで高そうなバスタオルが用意されていた。
吸水性が抜群で、がしがしと頭を拭くだけで乾いてしまいそうだ。

「先輩、シャワーお先にありがとうございました」
「おお、先に食べてていいからな…って」
「?」

擦れ違いざまに先輩に頭をわしゃわしゃされた。

「虎って言うより、ひよこみてえ」
「なっ!」

先輩に笑われたけど、確かに俺はひよこみたいかも知れない。
普段は軽いくせ毛の金髪をヘアワックスで固めてセットしてるけど、洗い立てのそれは確かにひよこみたいだ。

因みに龍牙は赤髪をツンツンに立てていて、闘鶏用のニワトリのようだ。
昔風のリーゼントに固めた髪は親父譲りで、決して今風じゃないのに何故だか文句なしにカッコイイ。
180センチ近い長身は17歳にして既に完成されていて、細マッチョの身体は脱いだら凄くて。

我が弟ながら否の打ち所がなくて、龍牙は悪戯に俺のコンプレックスを刺激してくる。


Bkm
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