空をばら撒いた/デイライト+ベルーガ





アンタが死にたいって云うならオレは止めないよ、むしろ好都合だ。だけどさあ、アンタだけ楽に死ぬなんて絶対許さない。どうせなんにも知らないと思ってるんでしょ?そういうところ本当にだいきらい。でもさ、そうやって効くんだか効かないんだか分からない薬飲んで、薬じゃおさまらない傷かかえて、虫の息でも生きようとしてるアンタならまあ考えなくもないかな。何をって、一緒にこうやって他人を殺してその死骸の上で生きていくことをだよ、ねぇ、ベルーガ隊長?(かっこわらいかっことじ、なんちゃって!!)

「ねーえ隊長、」
「…乗るな、退け、重い。」

しとしとと雨が降って外の景色の彩度を奪う。ああでも、真っ白なんかよりマシじゃない?そう聞いたら、立派な木の机に力なく突っ伏した彼は呻くように言った。いつもの鬼キャラはどこへやら、声にも、オレを払い除けようと伸ばす腕にもまるで力がない。

「…ねえ、」
「……五月蠅い、」
「…隊長ってば」


頭が痛い、と、彼は言っていた。それを聞いてオレはへぇ、と思った。というか実際口に出ていた。「へぇ、」それを聞いた彼はどんな反応を返したかは忘れちゃったけど、とりあえず現在のこの机と同化しそうな、もしくはこのまま溶けて雨に混じりそうな、今にも腐り落ちかねない無駄にでかい図体だとか。


「たーいちょーう、ね、オレ暇なんだけど」
「…俺は忙しい。というか五月蠅い。喋るな。」


「ひどーい!!」わざと大声でリアクションして子猫なんかを抱き抱えるみたいにぎゅってして彼の右肩に顎を乗せたら雨雲みたいに鈍くて低い声が背中から伝わってきた。おぉ怖。

「んー…」

彼の背骨に指先を這わせながら。あ、ちょっと痩せた?いつも着込んでてあんまわかんないけど。いよいよ本格的に黙り込んだ彼を嘲笑うようにオレは言葉でひとり遊び。


ねえ、いたいでしょう?


雨が降っている。オレの欝屈した気持ちみたいに、この人の身体にたまる鎮痛剤みたいに、今、2人の、2人だけのこの世界は灰色。
やがて。
薬が効いたのか痛みが消えた身体をテーブルの上に置きっぱなしで彼は眠りの淵に沈んでしまった。暇を持て余したオレは勝手にお湯沸かして、それに甘ったるいココアなんか作って彼の眠るテーブルに戻る。こんなとこで寝ちゃって、風邪ひいても知ーらないっと。


「…はやく、」

死ねたらいいね、なんて云ったらきっとアンタは怒るんだろ?眉をしかめたままの寝顔に半分だけ笑いながらオレはいう。でもさ、世の中には「負けたモン勝ち」って言葉もあるんだよね、悲しいことに。それを知らないアンタはきっとすごく残念だ。でも、きっとすごく救われてる。(周りの連中と己の無知に、ね)(ぶは、なんだかわらえる、)


だからさあ、未だ


「殺してなんかやらないよ、ベルーガ隊長?」



アンタの命なんかオレが握ってる程度で充分だ。





空をばら撒いた
BGM:all over love


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20101009







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