シークレットラブ!/デイライト→瀬莉





朝起きた時、頭が痛かった。昨日瀬莉に殴られたからか、夢でも見ていたのか、分からないけどもう一度毛布にくるまるのだ。ああ眠くなんかない。
私用の携帯電話から森のくまさんのオルゴールのやつが鳴って、もう良いとこだったのに、と思いながらも液晶に表示された文字に仕方なく電話に出る。

「アロー、デンバーです。おはようございます」
『ハロー、デンバー君。起こしてしまったかな?』
「いえ、さっき起きたとこです」

電話の相手は社長で、説教かとも思ったがどうやら違ったらしい。

『今朝から仕事があるってのに、グレー君とエモニエ君が昨晩から帰ってなくてね。電話にも出ないし』
「はあ、そうなんですか。でもなんでオレに?」
『いや、シオンと手分けしてみんなに電話してるんだよ。それにシフトを見たら君は昨晩は同じ方面に仕事に行っていたみたいだからね、見かけなかったかと思って』
「駅では見ましたけど…パートナーなんだし、よくなるとかには訊きました?」
『…ああ、芦屋君かい。彼は仕事が済んでから直帰したから一緒じゃなかったらしい』

だらだらとそんな話をしながらオレは仕事着を脱いでベッドのシーツを剥がし、洗濯機に放り込む。そう今日はお休みだから瀬莉が作ったケーキでも食べながらのんびりしたいのだ。
ほんとは、そんなに話したこともない人のことなんて訊かれても!って感じ。ファーストネームはおろか顔もあまりピンとこないんだから。

「オレそろそろシャワー浴びるんで…」
『ああ、休みにわざわざすまなかったね』
「ううん、別に暇だからいいですよ。それじゃ」

今日は天気がいい。きっとリジーは女友達と買い物にでも行ってるんだろうし、瀬莉はオレと同じように洗濯物でも洗っているに違いない。
いや、もう干しているかもしれないし、もしかしたらクリーニングに出しているのかもしれない。
そんな事をぼんやり考えながらシャワーを浴びて、綺麗なシャツを着て、乾かすのが面倒だったから濡れたままの髪で瀬莉の部屋まで。
コンコン!でも返事は無くて、オレはドアをガン!と蹴った。

「ねーえ!瀬莉、オレだよー」
『…デイライトか』
「だからね、開けてー」

暫くすると鍵が開く音が2回して、少しだけドアが開いた。瀬莉!まるで家政婦は見た!ってやつみたいだよ。おかしいったら!
瀬莉は一言入れよって言ってオレを部屋に入れてくれた。部屋は煙草の臭いで曇ってて、いつもなら珈琲のにおいがするのに、ってちょっと残念。でも実は嬉しかったりもするんだ。

「ねえ、瀬莉良い天気だねえ」
「ああ」
「今日は暑くなるんだって」
「そうか」
「大丈夫だよ、ちゃんと涼しいとこにしまってあるから」
「そうか」
「…瀬莉?元気ないね?オレ誰にも言わないよ?2人だけの秘密だもんね?」
「…ああ、そうだな」

瀬莉はなんにも悪くなんかない。
少しイライラしてただけで、カッとなっちゃっただけで、たまたまピストルのグリップが頭に当たったり、たまたま手が首にいっちゃったりしただけで、あの人たちは運が悪かっただけ。
寧ろ悪気が無かった瀬莉の手を汚したことを謝ってあげてほしいくらいなんだけど。仕方ないから今晩にでもどこかの道端に転がしといてあげる。
だからね、瀬莉はもっと笑ってていいんだよ!オレが全部ぜーんぶやってあげる!オレがちゃーんとまもってあげる!オレがずっととなりでわらっててあげる!

「ねえ、瀬莉。今日はケーキ焼かないの?」



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20110613









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