だれかの葬式のはなし/デイライト+瀬莉


葬式の出席者達の話


***




「ねえ、オレ知ってるよ」
「…なにを?」

眼帯でこちらからは表情の掴めない彼の、煙草を挟む指は綺麗だ。

「これが悲しいってやつなんだって」
「知ってるだけだろ」
「うん、ごめん」

昨晩に殉職した特攻の人の話、だ。
特別仲が良かったわけでも、だからと言って全く知らない相手ではない故人の顔はもう大分記憶から消えかけていた。
どんな顔だったか、どんな声だったか?名前だけは知っているけれど、他は忘れてしまった。
周りには泣いている奴もいるようでいない、中にはこの場にいない者もいた。
しかし彼、デイライトは瀬莉と共にこの場に居るのだ。
ただ、仲間だった。という事実のせいで。

「帰りに喫茶店寄ろうかな」
「瀬莉、ふきんしんだよー」
「そういうお前はこの後の予定は?」
「ケーキバイキング?」
「ほらな」
「だってそっちの予定が先に入ってたんだもん、こっちが急に入った予定なの!」

泣いた方がいいかな、と小声で囁いたデイライトは黒いスーツのポケットからハンカチを取り出した。

「やめろ、気色悪い」
「瀬莉は?泣いたふりしないの?」
「悪いが知らない奴の為に泣いてやる優しさは持ち合わせてねえ」
「じゃあもしオレが死んだら泣いてくれるの?」
「骨を粉にしてその辺の雪に撒いてやるよ」
「えー答えになってないよー」

壇上で故人のパートナーだった人物が崩れる様に泣いているのを見ながら、デイライトは笑った。

「オレはね、もし瀬莉が死んでも、あんな風に泣いたりしないよ」
「そりゃどーも」
「泣くとか、そんなのどうでも良くなっちゃって、きっと」
「あーもういい、それ以上言うな」
「あ、自殺はないよ絶対。オレ死ぬの嫌だもん」
「…」

式が終わって一斉に騒がしく人が動く。お互いの声はかき消されて聞こえない、その様々な音の中でデイライトはまた、壇上で泣いている彼を見て笑った。


「きっとね、また違うひとを探すだけだよ」


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20110129






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