思い出くらい きらきらでも、/デイライト+ベルーガ


デイライトの仕事中の話


***




以前は市街地であったであろう賑やかな冷たいコンクリートの街。冷たくなった、街。
ああ、あのデパートには観覧車があって。家族で乗ったのをよく覚えている。思い出だけがただあたたかく残る旧ロシア地区の冬。
デイライトは元背の高かったビル達をぐるりと見渡して、「リジーは近くにいないみたい…だな」と呟くのと同時に大好きな思い出を黙って心中にしまい込んだ。

「デイライト」
「…隊長」

いつもタイミングが悪いんだこのひとは。

「隊長は隣のエリア担当でしょ。あ、もしかして迷子?」
「茶化すな、携帯の電源を切っておいてよくそんな事が言えるな」
「? 切ってないけど?」
「なに?」

デイライトはポケットの中を探って携帯を探すフリ、をした。ジェスチャーで両手を広げて見せる。ほら、無いよ。

「忘れて来たのか?」
「んー、多分落したんじゃない?きっとそれでこわれちゃったんだと思う」
「仕事用の携帯なら拾われても問題ないだろうが、これからは気をつけろ。繋がらないから心配した…していた、副班長が。」
「そ、ありがと隊長」
「俺ではなく副班長に言え」
「了解」

「隊長、早く副隊長のとこ戻った方がいいよ」
「?」
「大事なものは、なくしたくないでしょ?」
「…そうだな」

隊長は本当に何も分かってないと思う。今自分の手が震えていたのも、どうせ気付いてないでしょ?
ここに来るまでに何人か殺ったんだろう、まだ慣れないのかなあ。息をするのと同じさ、手足を落とすのも、首を撥ねるのも、
一瞬、すべては、一瞬。目の前で大事なものがバラバラに吹き飛ぶのも、大事なひととの大事な記憶を失うのも。嘘を吐くのも。
(自分はおかしいのか?だってみんな殺し殺され、そんなの当たり前だよ、なんて。オレはおかしくなんか)


近くの路地裏でアレみたいにバラバラに砕けた携帯を横目で一度だけ見て、白い白い息を吐く。

「今日も寒いなあ」
(あの日も雪が、とか。考えてしまうのはいけないことなのかなあ)


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20101004







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