どんないろがすき/瀬莉


瀬莉が人を殺す話


***




ああ、死んでくれ。
俺の為に死んでくれ。

死ぬことは幸せなんかじゃない、そうだろう?

「(助けてくれよ!俺はテロなんかしたくなかった!本当だ!)」
「悪ィけど、俺仏語は知らん」

死にたくないのはよく分かった、何故なら統計的に見てこういう場面でこんな顔する奴ばっかりだからだ。
自分より餓鬼に殺されるのはさぞ悔しいだろうし、きっと嫁とか子どもとか、或いは恋人とか親友がいたりするんだろうし。
当然っちゃ当然のリアクション。もう、いい加減飽きてきたんだ。
手、右手、指、人差し指。この一本で、全部終わる。
(ああ、ショボイ。)

「お前、今まで楽しかったか?」
「(頼むから許してくれ!殺さないでくれよ…!)」
「分かんねえよなあ…俺もそれ訊かれたら答えられねえんだきっと、」

分からない、何故コイツはここで死ななきゃいけないのか、何故俺が今引き金に指をかけているのかすらも。
楽しくなんかない、会社や軍は「テロ撲滅」「世界平和」なんて掲げているが、胡散臭いと社員ながら思う。
こんなことをしている理由を簡潔に言えば給料の為なんだが(それじゃロマンが無いじゃないか?)

「もし俺が逆の立場だったら、今ここで死ぬとしたら、嫌だな」

コイツが俺に銃を弾かれていなかったら、そんな展開も実際あったかもしれない。
だとしたら、嫌だった。殺されるなんて嫌だ。理由なんかは考えるのが面倒だから無いけど、嫌だ。
目の前のコイツの様に命乞い(してるんだと思う、まさか言葉が通じないからって暴言を吐いたりはしていない…と思う)するだろう。
土下座くらいならするかもしれない、黒歴史決定で後々バレたら茶化されるネタになるのは確実だが。

「ああ、ちょっと時間かけすぎた。それじゃ悪いけど、」
「(      )」

今回はシオンに叱られずに済みそうだ。珍しい日もあるもんだなあ。
帰りに煙草買って帰ろう。珈琲カップも買いたいな、今朝割っちまったし。同じ型のまだあるかな。

気分はいいはず、だ。足取りは重い。よく解らない。
あ、そうだ、最近食べ過ぎているのかもしれない。この胸やけも吐き気もきっと全部そのせいだ。お菓子は作っても食わないでデイライトに食わせよう、これからはそうしよう。

「しまった、袖が汚れた。またクリーニングのおっさんにどやされる」


このあかはおれを、


「  …早くきれいにしないと、」

あおは、いい。だって、こんなにきれいだ。


.

20100927






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -