短編 | ナノ


Short novel


05

「…あ」
レストはふと気付き、父親に声をかける。
「なぁ親父、このラムネ買った時に、何か変わったこととか、なかった?」
「そうだなー…いや、特に無いな」
父親が少し考えてから、首を横にふった。

そして、レストから目を逸らす。

「―――!」

レストは、その父親の僅かな動きを見逃さなかった。
父親には、嘘をつくと目を逸らす癖がある。
「親父、嘘つくなよ。今、オレから目ェ逸らした」
すかさずそこを指摘する。

「……………」
父親は何も言わない。
少しの沈黙の後、父親はふっと笑う。
「…親父?」
訳も分からず、レストはもう一度父親に声をかける。父親は嬉しそうに微笑んだ。
「レスト、お前もだいぶ観察力があがったな」
「?」
「確かに俺は、嘘をついた」
兄弟を見ながら、父親は悪びれる訳でもなく、言い放った。

「…嘘?」
シュウが不安そうな目で、父親を見上げる。その弟の頭に、父親はぽんっと優しく手を乗せた。
「大丈夫だ。悪い嘘じゃないんだ」
「どういうことなんだよ?」
レストが問い詰める。
「まぁ焦るなって」
父親がやんわりと宥める。

「取り敢えず、そこに座るか」
空いていたベンチを見つけ、座る。兄弟にも座る様に促す。

それから父親は話し出した。




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