短編 | ナノ


Short novel


05

―と言う訳で、4人はテストの真っ最中だ。

ユウナが指を折りながら考える。
「えと、今のスライムで7匹目?」
「メダルは、あと1枚だな」
手元にあるメダルを見ながら、シュウが言う。あらかじめ預けられた地図を持つキリスが、腕の時計を見つめ、眉をひそめる。
「あと…40分か…」
「うーん…。ねぇキリス、もう1枚のメダルはどこにあるの?」
セシルに訊かれ、地図に視線を落としてメダルの位置を確認する。
「ここから東にちょっと、って感じだな。そこからサギリ先生んとこに戻るとなると、ギリギリかもなぁ」
頭を掻きながら、3人を見渡す。

「…東か」
シュウが先に歩き出す。
「あっちだな」
南へ向かって。慌ててセシルがシュウを止める。
「ちょ、ちょっとシュウ!そっちは南だよ!」
シュウは足を止め、振り向く。
「……え」
「東はこっちだよ〜!」
ユウナが正しい方向を指差す。
「シュウ、これで今日何回目だよ」
キリスが苦笑する。
「…悪い…」
セシルとユウナが笑う。
「本当にシュウって、方向音痴だよね」
「ここに入学したての時も、学校内で迷ってたっけ」
「…この学校、無駄に広いんだよ」
少し不機嫌そうな声で、シュウが言う。宥めるようにキリスがシュウの肩を叩く。
「ま、確かになぁ。俺も最初は迷ったし。でも今は平気だろ?」
学校内ならな、と頷く。
「…つーか、オレが方向音痴なのは、オレの所為じゃない。遺伝なんだ、絶対…」
諦めたように呟いた。

それから正面を見据えた。
「オレの事より、早くメダルを探しに行こうぜ。あっちなんだろ?」
そう言って、話を切り上げた。
「それもそうだな」
キリスがシュウと同じ方向を見る。
「魔物も、あと3匹倒さなくちゃいけないしね」
「メダルの場所までに、出てくるといいんだけど…」
セシルとユウナも、連れだって歩き出す。
「実技テストくらい、いい評価もらいたいからな…」
暗い顔をしてキリスがぽつりと呟く。普段のテストはあまり成績が良くないようだ。
「大丈夫だって、キリス!みんな一緒なんだから、ね!」
セシルがキリスの両手を握って励ます。二人は幼なじみである。
「…ありがとな。よーし、頑張るか!」
一瞬影が差したキリスに、笑顔と元気が戻る。
「そうそう、キリスはそうでなくちゃね」
ユウナが笑う。



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