指をからませる。なぞるようにして、幾度も、幾度も確かめ合う。まったく色身の違う肌がいまにも溶け合ってしまったらいいのにと淡い期待をして、でもそんなことはできないと悲しみに暮れる、というもどかしさを探ってみる。背の高さの違いをいとおしみ、首を傾け、視線を交わらせ、背伸びをして、膝を屈めて、唇を重ねてみる。甘くとろけるような熱を、もう離れたくないという身を焼かれるような想いを、この完璧なる器が生み出すことはないだろうかと、繰り返す。繰り返す。繰り返す。触れ合っている、ということを認識して、認識して、認識して、繰り返す。

「――やはり、オレ達ではだめだ」

抱きしめるという認識をしてみても、触覚がこの身に生まれることはない。温もりはない。エゼキエルの白いくすみのない面差しをいくら見つめても、その桜色の唇に自らのものを重ねるという認識をしてみても、情、とヒトが呼ぶものを理解することはできなかった。認識を解いた瞬間に、ふたりの天使はただのアストラル体へと戻る。顔を見なくとも、口を開かなくとも、形というものを持たずとも通じ合える、本来のありかたへと戻るのだ。
かなしいわね、と抑揚なく思念を揺らしたエゼキエルを横目に見ると、思念体の彼女は両手で顔を覆うようにして、まるでヒトが泣いている時のようなポーズをつくっていた。サリエルは目を逸らす。そんなことをしても、無駄だ。思念に語りかけると、どこか不自然にしゃくりあげる音を出してから、エゼキエルは手を下ろして大きな瞳をのぞかせた。

「どうしてわからないのかしら」

少女めいた、影のないほほ笑みが咲く。サリエルは黙ってそれを見つめ、いつの間にか同じようにかすかにほほ笑んでいる。それはもはや彼らの意志ではなく、ただそれが彼らの本来あるべき姿であるからだった。触れようとする、泣こうとする、しかしほほ笑むことしかできない。天使はそうあれと創られたのだから。

「ねえ……もしも眠ることができたなら、私、あなたにコモリウタを歌ってあげたいのよ」

よく意味が分からないままにヒトの真似事をしたがるエゼキエルに、やはりサリエルはただ頷いてやった。映し取っただけの慈愛にどれほどの価値があるのか、生憎と本物を知らぬ彼には知るすべがない。ただ子守唄というものを聴く幼子の、その眠りにつく安らかな顔だけが脳裏に鮮やかに浮かんで、きつく瞼を閉じた。