誰もいない通学路
バカを愛して、の2人。
バカを愛してを読んでなくても問題ないです。



衣替えの季節は10月なのに9月末の夕方は結構肌寒い。風が吹いたりすると最悪だし、なにより体育館から外にでると結構さむい。ジャージで帰っていいからまだましだけど制服で帰りましょうって規則だったら無理だよ、風邪ひくよ。2人のマネージャーと一緒に帰ろうとしたら雑用を頼まれて1番最後になってしまったせいでいつもより少し遅くて、少し寒い。半袖でいけないことはないけど冷え症にはちょっと辛い。雑用頼まれた分今度ジュース買ってもらおうとか思いながら門まで歩けば木兎の姿。

「忘れ物?」
「名前待ってた。俺そんないつも忘れ物してねーし!」
「そうだっけ?」
「そうだし」
「へえ」

「それよりさ、今日何の日でしょう!」
「誕生日でしょ、みんなでサプライズしたじゃん」

女子かよ、って気持ちと、もう忘れたの?やばくない?大丈夫?ってすごく心配になった。今日は木兎17歳の誕生日。後輩ができてちょっと先輩面してたのがちょっと落ち着いてきた2年の秋(?)、17歳になりました。先輩も含めてみんなでお祝いしたら、昨年もやったのに今年は涙目で喜んでて面白かった。なんで涙目なんだって突っ込まれたら「後輩もいて先輩もいて、うれしい」って子供みたいな感想だったけど、きっとこれが木兎が後輩から慕われて先輩から愛される理由なんだろう。先輩の中には最初はやっぱり目立つプレイをする木兎の事良く思ってない人もいたけれど、人柄がよかったのもあって受け入れてもらえて。

「毎年誕生日はなにをしているでしょう!」
「まだ2回目なんですけど」
「答えは手をつないで帰るでした!」

口が先だったか手が先だったか、ってくらいのスピードで手をギュッと握られる。そういえばそうだった昨年は手をつないで帰ったんだけどこれは恒例行事になったのか、と思い出す。

「なんで誕生日だと手つなぐの?」
「だって名前手つないで歩くのあんまり好きじゃないって昔言ってたけど、誕生日なら許されるかなと思って」

ああ、そういえばそんなこと言ったっけ、なんでだっけ、恥ずかしかったんだっけ。思い返してもなんでそれを言ったのか覚えてない。確かに手をつないで歩くことは特別好きでもないけれど。なんでそれをわざわざ木兎に言ったんだろう、言わずに手つないで歩いておけばいいのに一言多い女だな、昔の自分に驚きが隠せないわ。

「木兎は手つなぎたかったの?」
「俺はいつもつなぎたいけど名前が嫌がることはしたくないから。だから誕生日だけ!、、だめ?」

そんな大きな身長と大きな瞳でそんなこと言われて、だめっていうわけないの知っててやってるだろこいつ。って思うけど毎度毎度それにやられてる私も私だ。ダメじゃないって言えば一気に顔綻ばせてさあ

「そういえば俺のジャージ着る?最近寒いって言ってたじゃん」
「そうだけど、なんで?」
「だって今日いつもより遅いから寒いかなって。俺はわかんねーけど」

あの寒さに気づかない、冬でも半袖で走り回ることのある木兎が"寒いんだろうな"って予想だけで上着を貸そうとしてくれるなんて、たった1年で知らない間にすごく変わったんだなって。

「木兎にしては珍しいじゃん、ありがと」
「みんなに名前と2人で帰る!って言ったらマネたちが協力してやるから上着くらい貸してやんなって。俺そういうの気づかなくて、ごめんなあ」

くちびる尖らせて子供みたいに話して、でも最後は真剣で。ぜんぜんそんなの気にしてないのに、ひとりでいっぱい反省したんだろうなあ。私の手を握る大きな手に、腕に少しだけ寄り添ってみたら、「えっ」て頭上から声がして

「今日だけ特別ね」

可愛くない言い方してみても嬉しそうな声あげて、自分の行動と発言に恥ずかしくなって木兎の嬉しそうな声にまた恥ずかしくなって胸がギュッて締まって、
もう本当、ばかみたい。


2017/9/20 木兎光太郎 * happy birthday !
 
 
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