赤葦 フラストレーション
昨晩男子バレー部の副主将であるクラスメイトに頼み込んで朝練よりも少し早い時間に体育館に来てもらい鍵を開けてもらった

「あかあしー!トスー!」
「その言い方木兎さんみたい。何いそいでんの」
「フラストレーション溜まってるの」
「はいはい」

フラストレーション、なんて片仮名言葉使ってみたかっただけで只只イライラしているだけだった。何にイラついているのか原因が自分自身にも全くわからず、胸の中にまとわりつくイラつきやら不快感をひたすら赤葦があげてくれるボールにぶつけた

「朝から元気だなー」

そんな声とともに体育館の扉が開くとそこには部員達の姿があった。部員ではないのだから朝部活の邪魔をしてはいけないと思い、コートからでると赤葦もついてきた

「スッキリした?」

こちらは息すらあがっているというのに彼の呼吸は乱れてもいない、普段の練習の賜物なのか、それとも木兎の普段の練習が過酷すぎるのか

「微妙ー。でも、赤葦のトスは気持ちいいね」

彼のボールは綺麗な円を描いて名前の欲しいところに落ちてくる、毎度そういうわけではないがそれでもほかのセッターに比べたら確実に欲しい速度で欲しい場所にくるのは名前と赤葦の相性が良いのかもしれない。そんな事を思いながらも素直に赤葦のトスを褒めると赤葦は少しだけ口角をあげる

「名前と相性いいのかもね」
「人の心よまないでよね」
「同じこと考えてただけだよ」

赤葦も少なからずそう思っていた、そんな発言を聞いてしまって口角があがらないわけはない。ただ彼女と彼は女子と男子であり同じ競技を同じチームでやることは小学校の体育の授業かそれとも大人になったあとの個人サークルかのどちらかくらいだろう、間違いなく殆どの時間をスポーツに使う時期に共にすることはできない、そんなことを思いながら少し寂しい気持ちになる

「赤葦と同じチームだったらなー、毎日気持ちいいのかなー」
「フラストレーションって意味しってる?」
「モヤモヤする、みたいな」
「"欲求不満"」

赤葦の言葉を耳にして顔に熱が集まる、なんという言葉を口に出していたのだろうか無知とは恐ろしいものだ。欲求不満という言葉は決して一括りのものではないにしても、十代後半の思春期の彼等にとっては欲求不満という単語は性的なものを彷彿させ、意味も知らずフラストレーション(欲求不満)を口に出していた名前は顔を赤らめながら驚いた表情で赤葦を見ていた
「名前」
赤葦はそんな彼女の表情を見て楽しそうに笑みを浮かべると身を屈め彼女の耳元に近づき、彼女にしか聞こえない声で赤葦はボソッと言う

「"フラストレーション"解消させてあげよっか」

言葉に反応して立ち止まってしまった彼女をよそに赤葦は先に進んでいく。耳元で程よい低音で呟かれた言葉に胸が締め付けられる、こんなのこれから意識しずにいられない、そんな気持ちになりながら赤葦の背を呆然と見ていると振り向いた赤葦が口角をあげて意地悪く笑うのだった。


201702
あんな大人な赤葦くんも思春期って思うとたまらんです。
 
 
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