影山 こんにちは、愛情
高校生までは家が近いこともあっていつも幼なじみの男の子2人と一緒にいた。
ただ高校生にもなると徹のファンの女の子は中学の時の倍になり、倍になった中にはタチの悪い女の子たちもいたから次第に私と徹の距離は開いていって気づいたら幼なじみ3人じゃなく一と私の幼なじみ2人みたいになっていたし学年が上がってから知り合った友人の中には「及川と幼馴染みなの?しらなかった」って言う人もいるくらいだった。それでも私になにかあれば徹は家に来てくれていた。学校ではファンの子の目があるからと距離をおいていたけど、学校を休んだり一からなにか聞いたりする度に家に来てくれて心配してくれて、試合の前にわたしが流行病になった時もお見舞いにきてくれて一に怒られてたこともあった。大学はバラバラだったけどそれでもたまに集まったりなんとか繋がっていたけど社会人になって徹は営業(しかも大手)だし一は高校教諭になって私は保育関係の仕事に就いて休みの日もそれぞれ仕事があったりして集まる事が少なくなってきていた。

「ひとりぼっちの風邪がこんなにしんどいなんて」

ひとり暮らしの小さな部屋は些細な独り言すら大きな音に思える。風邪をひくと人肌恋しくなるなんて聞くけど人肌も確かに恋しいけど普通に話してくれる人がいてほしい、ただ寂しい。携帯を見ると一から「懐かしいやつがお前ん家むかってるから、それまでがんばれ。役にたたつかはわからん。」なんて書いてあって寂しいって思ってる事まで筒抜けか、そして誰が来るの、役にたつかわかんないってことは徹かな、徹に連絡してないから一経由で聞いたとしたらすぐ来そうだもんな、そう思いながら一からの連絡の時間を見ると結構前のもので何処から来るのかわからないけどそろそろ人がきてもいい頃だ、せめて髪くらい整えようと布団から出るとタイミングよくインターフォンが鳴る。仕方なく手櫛で整えながら扉を開ける。

「おひさしぶりっス」
「はっ?」
「えっ。名前さんですよね」
「え、そうだけど、なんで」
「岩泉さんから聞きました」
「なんで飛雄が!!!」

玄関を開けたら中学の時の後輩の影山飛雄がいた。中学の時は同じ委員会だったし部活でも面倒見たし高校入ってからも練習試合や公式で顔も合わせてたし、徹が迷惑かける度に私と一で回収(謝罪)にも行ってたけど、そんなに接点はなかったはずだけど、こうやって来てくれたんだからとりあえず部屋に入ってもらおう

「まあいいや、はいってー」
「いいんスか?」
「え?いいよ」

飛雄を部屋に入れ飲み物を聞くと1人前に遠慮なんてしちゃって、当たり前だけど私が最初に見た中学1年生の飛雄ではなくてもう大人の男性になっていた。とりあえず珈琲をいれ砂糖とミルクは要らないというからブラックのまま飛雄の前に出すと控えめに「あざっす」と呟いた。

「名前さん元気そうでよかったです」
「ちがうよ、飛雄が来たから吃驚して普通に見えるだけだよ」
「? 用がおわったら帰るんで」
「えー。そういえばなんで飛雄?」
「俺いま烏野のバレー部少しだけ行ってて、そしたら今日岩泉さんの所と練習試合で」
「はじめから頼まれて来たの?」
「いや、岩泉さんが名前さんと及川さんの話してくれた時に風邪ひいてるって教えてくれて、俺が、住所きいてお見舞いに行きたいって言ったんスけど」

あの飛雄がお見舞いに行きたいって自分から一に言ったなんて北一の皆が聞いたら皆今の私のように言葉を無くしてしまうだろう、多分一も絶句したと思う。かたまった私に焦ったのか「これ」といって飛雄が差し出してきたのはポカリとゼリーとカットフルーツだった。ちゃんと風邪の体に優しいものばかり入ってて私の知ってる飛雄じゃないんだと実感させられる

「飛雄ひとり暮らし?」
「っす」
「ひとり暮らしの風邪さみしいね」
「じゃあ、俺と一緒に暮らしましょう」
「は?」

いきなり何を言い出したかと思って飛雄の顔を見たら耳まで赤くして真剣な表情をしていた、これは冗談ではないのか

「ひとりにしないように俺、がんばるんで」

あんなにプライドの高かった飛雄が声を僅かに震わせ顔を赤らめながら一生懸命伝えてくれる。数年ぶりに会ったし当時も凄く仲が良かったわけでもないけど、飛雄の言葉は安心感を与えたくれた。

「じゃ あ、 連絡先交換からはじめよっか」
「‥そーっすよね」

少し残念そうな顔をしながら携帯を取り出し連絡先を交換する、嬉しかったけどすぐには答えも出せないし一緒に暮らせるはずもない。飛雄の連絡先がでてきて「まずはお友達から」なんて送れば目の前で少しだけ口角をあげて嬉しそうな飛雄がいた。知らない男の人になったかと思っていたけど私の後輩はまだまだ可愛いみたいだ。
 
 
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