プラトニック少年
「苗字さん」

図書委員の仕事が終わり帰路につく頃には部活終りの生徒が部室棟から離れ校門にむかっている頃だった。部活動に必要そうな荷物を持ち帰路につく生徒達を眺めながら歩いていたところを、後方から突如名前を呼ばれ振り向くが、声をかけてきた生徒の名前が思い浮かばない誰だろうか

「バレー部の、」
「2年の赤葦です」

"誰この人"と失礼な思いが顔に出ていたのだろうか、こちらぁ尋ねるよりも先に彼は自分の名を名乗り連られてこちらも名を名乗るが彼は"知ってるよ"と少し可笑しそうに言った、名前を呼んで声をかけてきたのだ、名前を知らないわけがない

「赤葦って、副主将の」
「知ってるんだ、よかった」
「パッと名前は出てきませんでしたが‥」
「だと思った」

失礼な言葉を口走ってしまったが、そんな言葉を聞きながらも彼は優しそうな目でこちら見ていて、よく耳にする"バレー部副主将"のイメージとは全く違っていた

「委員会の帰り?」
「そうですけど、私に何か用でも?」
「苗字さんさえよければ、男子バレー部でマネージャーをしてほしいんだ。」
「‥なんでわたしを?」

初めてのコンタクトが今の彼と私の間には同じ学校の生徒という共通点以外ないはずだ、なのに彼は何故初対面の人間をバレー部に勧誘しようとしているのだろうか、何もなく誘うわけもない、ならば理由を聞かないわけにはいかない、理由を聞いてもきっと答えは変わらないが。

「先輩たちにいけって言われたから俺が来たんだ、ごめんね。」
「パシリじゃないですか」

流石体育会系、先輩命令は絶対という昔からの考えを引き継いでいてその先輩命令は副主将であろうと2年の彼には有効のようだ。こんな大きな背で噂に聞くクールな副主将がパシリだなんて、思わず笑ってしまった

「ちょっと笑いすぎ」
「は、すいません、でも部活はお断りします」

笑いすぎてしまい怒っているのかと思えば、彼は目をそらし少し気まずそうにしているだけだった、決して怒っているわけては無さそうで安心したと共に、要件に対して返答する。別に部活動が嫌いな訳では無い、中学生の頃は部活ばかりの生活だったからこそ少しくらい自由になりたいのだ。もし何か部活動を始めた時同じ学年の子たちに比べスタートラインが劣っていてもいい、今はそう思ってしまう程度の気持ちなのだ。

「そっか、でも気がかわったらいつでも待ってるから」
「気がかわったら、はい。」

彼の言葉にうやむやな返答を返し要件が終わったと思い、軽く頭をさげ失礼しようとすると腕を掴まれた、なんなんだ一体

「えー、なんですか」
「すごい面倒くさそう。連絡先聞いてもいいかな」
「気がかわったら行きますから」
「その件じゃなくて」

その件じゃなかったらなんなのだ、不審そうな目で彼を見る制服姿の私と私の腕を掴むジャージ姿の彼の姿は周りから見たら異様だろう。一歩間違えればカップルのいざこざに見えないこともないだろう、困った。

「部活関係なく、苗字さんの連絡先を知りたいなって思って、ごめん」

頬を染めながら紡がれた彼の言葉はボソボソと呟かれた。"端正な顔立ちでクールで先輩をもうまく扱う副主将"という噂にきく彼の姿と目の前の彼の姿、そのギャップに驚きと胸が締め付けられた。

「赤葦さん、こういうのナンパっていうんですよ‥」

そんな可愛げのないことを言いながらもスマフォをカバンから取り出すのをみて、彼もジャージのポケットからスマフォを取り出して2人で番号を交換した。

「ナンパ‥なんて初めてした。引き止めてごめん、ありがとう」

この人は見た目よりもおちゃめなのかもしれない、そんなことを考えがら彼に頭をさげ帰路につく。スマフォの画面を見れば「赤葦京治」という見慣れない名前から連絡がはいっていた。

"時間取らせてごめんね、気をつけて"

端正な顔立ちで綺麗な名前のあの人は、こんな私に何を見出して連絡先を聞いたのだろう、勘違いしてしまいそうになる気持ちを否定し、引き締め、画面に映る赤葦京治の漢字の並びを眺めながら思うのだった。


2017.01.19
 
 
BACK
 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -