初恋が最後の恋
授業も終わり放課後、新聞部の手伝いをすることになった私は1人教室に残っていた。新聞部の佐助は幸村の叫び声に反応して様子を見てくると言って出て言ってしまった。
きっとまたサッカー部と野球部で約束したグランドの順番を政宗が無視して幸村が騒いでたんだろう。小十郎さんがいても政宗じゃ無意味だろう。…あいつ自由すぎだろう。
佐助がいないのに新聞部の手伝いと言っても何をすればいいのか全く分からなくて私は鞄の中からデジカメを出し昔の写真を見ると、そこには中学を卒業したときに幸村と私の姿、そして高校の制服姿の佐助の姿があった。
3人共同じ中学で近所で、でも佐助だけ1つ上だったから私たちより先に卒業していって、でも私たちの卒業式にはわざわざ来てくれた。

『もう2年前か・・』

この学園に入ってもう2年、中学を卒業してからもう2年、幸村と少しだけ距離ができて2年。
2年なんて本当にあっというまで、佐助はもう卒業の年だし、私と幸村も来年には卒業だと思うと寂しい。卒業したら今までみたいに会うこともなくなるのだろうか


『・・ジュース買いにいこう』


そんなことをひたすら考えていても気は滅入るばかりだし、私と幸村はそんなに距離ができてるわけじゃないし佐助も兄みたいなものなのだから会いたいといえば会ってくれるだろう。
そういえば、昔男の子は18に女の子は16になったら結婚できると佐助に教えてもらった時にした約束幸村は覚えているのかな、子供の約束だしまだ17だし関係ないけど、覚えていてくれたらいいな。
そんなことを思いながら歩いていればすぐに自販機は目の前にありカーディガンのポケットに入れておいた小銭を入れ、イチゴオレを買う。


「ナマエはいつもそれでござるな」
『!・・ちょ、いきなり真後ろから声かけるのやめてくれないかな。』

後ろからいきなり髪をぐしゃぐしゃされながら呟かれた。その声の主は、見なくても理解できるほど知っている幸村。私が自販機から退けば幸村が自販機に向かい私が押したボタンを押す

『まねしないでー。』
「某はいつもこれでござる!」

そう言って買ったばかりにイチゴオレにストローをさすとイチゴオレが噴き出してきた。

「ぬぉ!」
『・・・馬鹿じゃん』

何も変わっていない、中学のときも同じことをしていた、いつもイチゴオレを買っては学習能力がないのか力を入れてストローを指すものだから、紙パックを持つ手にも力が入ってしまってピンク色の液体が噴き出していた。

「ナマエと2人で話すのなんて何時ぶりだろうか」
『さあ・・。っていうか部活いけよ』

そう言って足先で小突いてみれば「足癖が悪いのは治っておらぬな」などと言ってへらへら笑って見せた、部活行けよ。

『部活行かないなら、私戻るねー』

2人で話すのなんて、高校に入ってからは無かったから何を話したらいいかわからないし、さっきまで昔の約束を思い出していたのだから幸村の顔を見るのが少しだけ恥ずかしくてその場から去ろうとすれば制止の声

「此処にいてくだされ!」

私の返事なんて聞かずに幸村は走り去って行った、なんなんだ天然め。高校生になって少し距離ができていたというのに久しぶりに話した幸村は何も変わっていなくて、気まずく思ってしまった自分が恥ずかしい。というか早くしないと佐助戻ってきちゃうんだけど

「待たせたでござるううう!」

大きな声と共に全速力で帰ってきた幸村は少しだけ乱れた息を整える、なんにでも全力なところはいまだに変わっていない、ばかだ。

「これを!」

そう言って差し出してきたのは

「昔した約束ではあるが、某は覚えているしナマエは守ってくれていると思っておる」

黄色のチューリップで

「まだ18ではないのだから約束とは関係ないでござるが、もし2人で話す機会があれば渡せるように勝手に小十郎殿の畑で育てていたのだ。」

花言葉は

「高校に入ってからは2人で話す機会もなくなってしまったし、約束も遥か昔の子供の約束であろう。しかし某はまだ約束をした時の気持ちでおるので、それをナマエに伝えたくて」

"  永  遠  の  愛  "

「だから今2人になれたから、取ってきたのだが・・嫌であったか?」


 " お前ら何見てんの? "
 " チューリップだよ、黄色の。 "
 " めずらしいよねー。"
 " じゃあ俺様が花言葉教えてやるよ "
 " なにー? "
 " 永遠の愛 "
 " どーゆーことー? "
 " ずっと好きでいるってことだよ! "
 " 某ナマエ殿のことがすきでござる! "
 " えー。ナマエもゆっきーのことスキー。"
 " じゃあずっと一緒でござるな!"
 " 俺様は?!男は18女は16で結婚できるんだ "
 " じゃあ18歳になってもゆっきーがナマエのこと好きだったら結婚できるねー "
 " おおお!約束でござるな・・?!"


「ナマエが泣くと某も悲しくなるので、笑って欲しいのだがそんなに嫌だったでござるか?」
『嫌じゃない・・。けど覚えているなんて思わなくて2人になることも減ってただの幼馴染で卒業したらばらばらになると思ってたから、だからっ』

そこまで言いあげると、出ていた涙は止まることもせずにただ量を増して流れていく。
そんな私を見て幸村は昔泣いていた私にしていたように、やさしく頭を撫でてくれて

『私は、今も、前も、ずっと好きだよ』

するりと撫でていた手が髪を撫ですべり、肩を抱かれ囁かれる

「某もずっとずっとナマエを恋慕っていた」





title by thenks 確かに恋だった。
 
 
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