一方通行
「雪村はどうした」
『起こしてこようか』
「いや…俺が行こう」
『…』

一は千鶴ちゃんを起こしに行くんだね、私が寝坊しても起こしてくれるかな?男装して剣持っていたって私だって女だよ。…なんて考えたって無駄だよね


「すいません、遅くなりました!」
ああ、やめて、その声嫌い
「雪村早く席につけ」
「そうだよ、千鶴ちゃん。」
「千鶴早くしろよ!新八さんがうるせ―から!」
「なっ平助!」
『…早く食べよう、巡察もあるんだし』
「名前の言う通りだ、早く座れ」
「はい!すいません…」

なんで一の言葉をすぐ聞くの、なんで一の顔を見るの?なんで一も優しくするの?
なんでなんでなんで…
前からいたのは私なのに私なのに私なのに…


「名前どうした」
『…別に』
ご飯争奪戦を横目に周りに聞こえない声で問う。
彼なりの優しさなのかも知れないが、今はそれが痛い
きっと一は千鶴が好きなんだ、私なんかもう…駄目なんだ

『ごちそうさまでした』
「名前全然食べてね―じゃねえか!だがこの魚いただく!」
「ちょ、しんぱっつぁん!」
『いいんだよ平助、私はもういらないから。』


「名前何処行きやがる」
『巡察の準備ですよ』
「全然飯食ってないのに大丈夫なのか」
『大丈夫ですよ、土方さん心配しすぎ。皺が増えちゃいますよ』
「てめぇ!…まあいい、今日は三番組と一番組の巡察だからな」


総司と一だから千鶴は来ないかな…
「私もご一緒してもいいですか」
…なんて甘かった、総司がいるからなんて間違ってた。せめて総司の方に行ってよ
「じゃあお前は斎藤についてけ」
土方さん、斬らないから恨ませて。


部屋に戻ってもくもくと準備をする、刀の手入れは常日頃からしてるから問題ない
完全に一の影響、一が好きな刀だから私も刀をよく知ろうとした
一が居合いだから私だって居合いを練習した、一程うまくできないけどそこそこできるようにした。
新撰組になることだって、一がいるから決めた。でも最初一はいなかった
一は来ると思ったのに最初いなかった・・でもきてくれた、うれしかった
今の私は斎藤一でできてる、なのに一は千鶴が好きで・・
ああ、もう巡察の時間早く行かないと嫌われちゃう


「名前何を考えている、後ろが空いている、不逞浪士がどこに居るかもわからぬ、気をつけろ」
『えっ・・ああ、一か。うんごめん、なんでもないよ』
「俺には言えないことなのか」
『言っても迷惑だから言ってあげない』
「名前さん、無理はよくないですよ、よかったら私に言ってください」
ああ、ほらおせっかい、ほっといてよ。
『うん、ありがとう、でも大丈夫だからね。』
「そうです・・か・・、でも無理しないでくださいね!」
そうだね、無理はよくないよね、でも無理しなきゃいけないことだってあるの
今千鶴が話しかけてる事によって私がこんなことになってるなんて知らないでしょ
『千鶴には、いつか話せるときが来たら悩みきいてほしいな』
そういって微笑めば、嬉しそうな顔がかえってきた。


ただの嫉妬で脳内で何度千鶴を殺したことか
千鶴は、ただの普通の子で性格がよくて家庭的ですごく女の子らしい、ただの普通の良い子。
なのに一と話すっていうだけで私の嫉妬の対象にはいってしまった。千鶴ごめんね、でももう止められない。

巡察を終えて屯所に帰る、はじめは自室にむかい千鶴は晩飯の支度にむかった、聞くなら今


『はじめ』
「なんだ名前」
『はじめの部屋行っていい?』
「いいが・・此処ではできぬ話か?」
『まあ、そんなとこ。』
「・・入れ。」

一に続いて部屋にはいる、相変わらず殺風景だが一らしい部屋

「どうしたんだ名前変だぞ」
『もしも、私が千鶴ちゃんだったら愛してくれた?』
「な・・っ!何を言っている」
『答えてよ。』
「・・・。そのような感情を雪村に抱いたことはない。」
『私が千鶴を殺したらどうする?』
「・・・。副長の命が出たら名前を殺すが、彼女はいつ殺されてもおかしくない身だ」
『・・・そっか。』
「名前今日はどうした。変だが・・」

はじめにとって彼女は新撰組の駒でしかないのか、それとも私相手だからそう言うのか
はじめはいつもいつも、土方さんが絶対で、新撰組が何より1番で・・・恋なんてないんじゃないか
そうだとすれば私が千鶴に嫉妬するのは間違っていて、更に私が一に恋慕っているなんて・・迷惑なんじゃないか。

『迷惑かけてごめんね・・』
「なにをだ。名前に迷惑などかけられた覚えなど無い。」
『私ね、きっとはじめに依存してるんだよ・・』
「それはどういうことだ」
『はじめが新撰組を居場所だと思ってるように、私は一がいないと成り立たない』
「・・・」
『簡単に言うとね、好きなんだよはじめのこと、でも迷惑だよね。ごめんね。』
「な・・っ!それは本当の事か」
『こんなくだらない嘘なんてつかない』

本当の事か聞かれるなんて一にとっては嫌なことだったんだろう
本当自滅というか自爆というかなんで自分で自分の首を絞めてるの

笑いたいのに、笑いたいのに。出てくるのは涙だけ、こんなとこ誰にも見せたくないのに



「名前、俺はその・・・なんだ・・名前のこと・・・好きだ・・・が」
『・・私の好きと一の好きはきっと違うよ・・』

そう言い残し、私は一から逃げた


一方通行




(恋慕だというのに)(何が違うのだ)

 
 
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