07:53
 
「ねぇ、これやり始めてから丸一日経ったよ」
「そうだね」
「もう良いんじゃないの?いい加減飽きてきたでしょ?」
「そうだなぁ、大体の過ごし方は解ったし、もう良いかな」
「え、じゃあ外してくれんの!?」
「君も割と頑張ってくれたし、そろそろ解放してあげるよ」
 
やった!と心の中でガッツポーズ。正直ここでまだまだ続けるとか言われたら本気でどうしようかと思ったけど、案外素直に終わらせてくれて良かった。臨也に従ってデスクの方へと歩み寄る。そこに鍵を隠してやがったのかちくしょう、とか思って見詰めて居たら、取り出されたのはいつぞやの指輪が入った小さな青い箱。思えばこの誘惑に負けたせいでこんな状況になったんでしたね、すっかり忘れてたけどもう騙されねぇぞ。
 
「俺はさ、婚約指輪って言うのもいわば一つの鎖みたいなものだと思うんだよね」
「…は?」
「運命の赤い糸、なんてものを信じているとは言わないけどさ。それは目に見えない繋がりだから信じがたいだけであって、指輪のように形を成すと、途端にその存在を意識し始めたりしない?」
「うん、まぁ、多分」
「でも俺は、それすらも不確かな物だと思うんだよね。所詮は指輪、外してしまえばそれで済むし、実際に何かで繋がっている訳でも無い。…それなら、もっと確かな物で繋がれば良い。誰の目から見ても明らかに解る様な物…そう、例えばこういう手錠とかでね」
「何が言いたいのか、よく、解んないんだけど」
「君って本当に鈍いよね、それとも気付かない振りしてるだけ?…まぁ、どっちでも良いや。思う存分悩めば良いよ、そしてじっくり考えて、答えを出すと良い。それくらいは待ってあげるからさ」
 
箱の中から現れたのは、あの時の指輪と、小さな小さな鍵。それらを纏めて手にした臨也が、あの時と同じように私の手を取る。カチャリと金属の噛み合う音がして、私の左手首からようやく手錠が外された。代わりに、薬指へとそっと指輪が通される。どうやってサイズを調べたんだか、それはぴったりと私の指に嵌った。
 
「それじゃ、付き合ってくれてありがとう。中々に楽しかったよ。…またね」
 
自分の手首からも手錠を外し終えた臨也が、満足気な笑みを浮かべた。じゃらりと、手錠と鎖が床に落ちる。私はもう一度臨也の顔を睨みつけてから、黙って部屋を後にした。帰りついたら、まずは着替えて会社の上司に謝罪の電話を入れよう。買った洋服などの荷物が届いていたらそれを片付けて、静雄に昨日の謝罪と説明をしに行こう。それから、それから……あぁちくしょう、顔が熱い。
 
ネタばれの代償は鎖よりも重いものでした。
 
End...?
 
 
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