「貴方は戦と共に滅ぶべきだわ」
 
名も知らぬ女はそう言った。
 
「戦う他に生きる道など知らぬのでしょう?」
 
薄紅を引いた口を皮肉に歪めてそう言った。
 
「戦場に立っている時が一番楽しそうだもの。退屈な地に落ち、漫然と生き続けるくらいなら、いっそ華々しく散ってしまった方が幸せだわ、きっと」
 
何も答えぬ俺に飽いたのか、程無く女は去って行った。今にして思えば、あの言葉は全て女自身に向けられたものだったのだろう。最後に女の姿を目にした時、容易く避けられる筈の銃弾を前に女は自ら刀を降ろし、偶々目についたのだろう俺に対して確かに笑いかけていた。左様ならば仕方が無いと薄い唇でなぞりながら、女は緩やかに地へと堕ちていった。
 
あれから数年。戦が終わった今、年月を重ねるごとに女のことを思い出す。あの時奴を追っていれば、虚ろな生を送ることは無かったのだろう。然し、島田という男に出逢うことも、再び戦場に身を踊らせることも無かったのだと思えば、存外この世も捨てたものでは無かったらしい。
 
全ての感覚が失われゆく中、帳の下りた視界の先に一人佇む女の姿を見た時、今ならば返すべき答えを持ち合わせていることに気が付いた。
 
 

キュウゾウの日
140909
 
 
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