* 暴力表現

 
 
 
 
 
「ねぇ、聞いてる?」
 
うつ伏せに倒れたまま激しく肩を上下させるだけの彼を蹴り転がす。ごろりと仰向けになった彼は恨めし気に私を睨みつけた。
 
「ほら、そんな目で人を見ない。何度言ったら解るの?」
 
彼の右目を私の右足で踏み付ける。咄嗟に目蓋を閉じられたのは不愉快極まりなかったが、足の下で彼の瞳がぐちぐちと音を立てているのに気付けば一先ずは満足出来た。強く、けれど眼球は潰してしまわないように気を付けながら何度も足の指へと力を込めて彼の目を踏む。痛みに身を跳ねさせる様は滑稽だったけれど、その口から謝罪らしき言葉の一つすら出て来ないのは納得がいかない。尤も、布で猿ぐつわをされている状態では、何を言おうにもくぐもった呻き声にしかならないだろうけど。その内に多少の余裕が出て来たのか、固く閉じられていた左目がうっすらと開かれる。苦悶の色を浮かべながらも、確固たる意志を持つ赤色が私を見る。嗚呼、気持ち悪い。思わず右足でその頬を蹴り飛ばした。
 
「アナタの顔は好きよ、臨也。だけどその目は嫌い、大嫌い」
 
腰を落とし、艶やかな黒髪を無造作に掴んでその顔を無理矢理に引き上げる。それでも視線だけはそっぽを向いているのは、可愛らしい程にささやかな抵抗のつもりなのか、それともこれ以上視線を合わせる事に危険を感じたのか。まぁ、どちらでも良い。
 
「目は口ほどに物を言うって言葉を知らないの?アナタの考えは透けて見えるのよ、いつもいつもいつもいつも」
 
ちらりと視線がこちらを向いたので、反射的に力一杯その頭を床へ叩きつけてやる。フローリングにぶつかる鈍い音が二度程響いた。拘束されて殆ど自由の効かない身体を小さく丸めて痛みに耐える様子は、まるで芋虫か蛆虫のようで、ノミ等より余程お似合いだ。静雄にも是非見せてやろうと、ポケットから携帯を取り出して二、三枚写真に収めて置く。それでも尚、画面の向こうから彼がこちらをじっと見詰めているのに気付いたので、思わず大きな溜息を一つ。
 
「いっそ抉ってみる?」
 
しゃがみ込んで赤い爪をその目の縁に立ててやると、臨也は諦めたようにその目を閉じた。
 
 

がらくたの宇佐見さんに大いに影響を受けている
 
111102
 
 
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