つん、と鼻を突く感覚に、何だろうと疑問符を浮かべた後。しばらくしてようやく、自分が無性に泣きたくなっている事に気付いた。
 
「どうかしたの?」
 
すん、と小さく鼻をすする音に気付いた彼が、気遣うようなその言葉とは裏腹の、酷く愉しげな笑みを浮かべて私に問い掛ける。別に、と短く答えながら、私はそれを見ないようにと顔を背けた。視界に映るのはソファーの背もたれだけ。
 
「理由も無く、そんな顔するはずないよね」
 
先程よりも遥かに近い距離から降って来た声。同時にゆっくりとソファーが沈んで、彼が私の上に覆い被るのが解った。ちらりと視線を横へと向ければほら、紅い瞳が私を見下ろしている。
 
「何がそんなに悲しいの?それとも辛くて苦しいのかな?…あぁ、嬉しい時にも涙は出るんだっけ。でも、それならそんな顔はしてないよね」
 
どうして?と問い掛けた彼の唇が私の目元に落ちてきたので、ゆるゆると目蓋を閉じる。溜まった涙が溢れて零れて、ぽとりと落ちる音がした。
 
 

110423
 
 
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