「あーつーいー…」
「…」
「暑ーいッ!」
「ええい、いい加減黙らぬか!」
 
執務室にある椅子の一つでだらだらと文句を言っていたら、ついに司馬懿先生が怒った。まぁ、お仕事中にうるさくしてればそりゃあね。
 
「だって暑いですよ司馬懿先生!」
「聞いているこちらまで暑くなるわ」
「このままでは溶けてしまいそうです!」
「そう言って実際に溶けた者など居らん」
 
それにしても全く取り合ってくれない司馬懿先生。っていうか自分はさり気無く羽扇で扇いでるし。
 
「ずるいですー!私にも貸して下さい!」
「馬鹿を言うな、これは私のだ」
「けち!」
「貴様、先程から誰に向かって口を利いている…!」
 
先生のこめかみにうっすら青筋が浮かび始めた。やばいやばい。
 
「じゃあ良いです、諸葛亮先生に借りに行きます」
「奴の部屋に行く事など許さん」
「どこへ行こうが私の勝手ですー」
 
こんな蒸し暑くて話しの解らない人の部屋なんてさっさと出て行くに限る。けれど立ち上がって扉へ向かおうとしたところで司馬懿先生に呼び止められた。振り向けば怖ーい顔した先生がこっちへ来い、と待っている。逃げ損ねた、と観念して傍へ向かうと、何故か机越しではなく椅子の隣へ来るようにとの指示。え、何、叩くの?と今までの経験上、警戒しながら近付いたものの、あっさり腕を掴まれてしまう。覚悟して強く眼を閉じると、何故か次の瞬間にはくるりと身体の向きが反転し、そのまま司馬懿先生の膝の上へと腰を下ろす形となった。え、何これ。
 
「ちょ、え、なんですかこれ」
「こうすれば二人で涼めよう」
 
えー、いや、寧ろ密着してて余計あっついんですが…。そう思って後ろを振り向こうとしたら、ばふっと羽扇で顔を押さえられた。だから暑いって!でも視界の端に捉えた先生の顔は私より赤くて、照れてるーって笑ったら突き落とされた。ひどい。
 
 

100521
title by Judy
 
 
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