*女体化


鬼灯の何所が好きと聞かれたら絶対僕は性格と答えると思う。僕はあの不器用で可愛らしい鬼灯が好き。
自分の気持ちを素直に言うことが出来なくて回りくどいことしか出来ない鬼灯を、僕はいち早く理解して認識して包み込んであげる。鬼灯はそれにとても苛立ちを感じているようだけど僕はそんな些細なことが楽しくて仕方がない。まるで鬼灯のことなら何でも知っているという錯覚に陥ることが出来るから。いくら僕でも鬼灯の全てなんか分かりっこない、だから一つでも多く理解しようと鬼灯の言葉を拾って、僕の言葉と気持ちを与える。怯えながらもおずおずとそれらを受け取り胸にしまいこんでいく鬼灯が可愛くて僕はこの細くて小さな身体を何度も何度も抱きしめた。

「別に怯えなくても良いんじゃない?」

「何の話をしているのか分かりかねます。一回死ぬんですか?」

こんなやり取りを何回も何十回も繰り返してその氷よりも冷たく出来ているような心に白澤という男を刻み付けた。調教なんかじゃないそんな物騒なこと鬼灯ならまだしもこの僕が女の子にするはずがない。ただ僕の前では素直になれるようにと、素直になって良いんだとそう教えてあげただけの話。
その細くて冷たい指は僕の頬をなでるまるで何かを確認しているみたいに。その行為に何の意味があるのかは鬼灯にしか分からない、だけど彼女がそれを望むなら、僕にそれをあたえてくれるなら僕はそれを甘んじて受け入れようと思う。我ながら今までにない一途さだ。

「貴方は簡単に私にこのようなことをしてきますが」

「うん」

「私はたまったものじゃありませんよ」

「そう?」

「そうです」

こんなものただのスキンシップだよ。言おうとした言葉は口から外へ出ることはなかった。下から伸びてきた腕が僕の首へ絡みつき僕の頭を無理やり下の方へと下ろした。顔に付いている唇という部分は彼女のそれに塞がれる。幼稚なキスではなかった、まるで腹の探り合いのようなキス。純粋なキスをするにはもう僕も彼女もひねくれすぎてしまった。でもそれでちょうど良い。僕の舌から逃げ回る彼女の様子はやはり不器用そのものだ。

(自分から入れてきたくせに・・・)

でもそこが可愛らしい。はまっていく、抜け出せない、彼女の独特な甘い香りが鼻をかすめてうっとりする。香水ではない彼女の香り、それが今僕の腕の中にある。口を放して流れる涎、彼女は息が苦しかったらしく僕を睨みつけながら肩で呼吸をする。僕はそれを見ながら涎を拭いニヤける顔を隠す。こんなもの彼女に見られたただじゃ済まされない。

「ウル目で睨まれても、」

「黙って・・・下さい・・・、もしくは・・死ね」

「素直じゃない」

僕の前だったら虚勢なんかはらなくても良いんだよ。自分の有りのままの姿で居れば良い、恥ずかしがらなくても怯えなくても見繕ったりもしなくて良い。


「僕の前でくらい女になってくれたって良いんじゃない?マイハニー?」
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