高誕記念小説

*銀八視点



誕生日ケーキというのは二人で食べるならどのくらいの大きさが良いのだろうとか、プレゼントは何が良いだろうとか。
そんなことを考える奴らが俺は正直理解出来なかった。

何故その人が生まれたというだけで他の者たちが祝わなければいけない。
ましてやプレゼントなど金がかかるだけではないか。

とそんなことを考えながら俺は小・中・高を卒業して大人になった。

多分コレは俺にそんなことをしあえる友人などが居なかった為に俺はこんな風になってしまったのだろう。
残念ながらそれは自分でも認めている。

ていうか誰だよ、誕生日祝い始めた奴。
ちょっと俺の前に来い叩きのめしてやる。



【大人プレゼント】



「8月10日…俺の誕生日なんだよね。」
「は?」

そんな言葉を聴いたのが今日の16時のこと…正確に言えば、8月9日(←ココ重要)火曜日、16時26分37秒。
もう10日まで8時間切った後だった。

「は?何それ聞いてない。」

「ああ、だって言ってないもん。」

「馬鹿じゃない。」

「言うの忘れた。」

何という事だ!!自分の彼氏に自分の誕生日を言うのを忘れた!?馬鹿じゃないのコイツ。
しかももう10日まで1日も無いだって!?馬鹿だろお前ホント馬鹿!!

「え?で、お前何してもらいたいの、誕生日だからって何してもらいたいの?プレゼント欲しい?ケーキ食べたい?今から用意出来るか馬鹿たれが!!」

「ゴメンナサイ、マイダーリンギンパチ。」

「心こもってない!!マイダーリンは嬉しかったけど心こもってない!!」

俺、涙目である。

「大体お前は何でそう、大事な事を俺に早く言わないの!!馬鹿じゃないの大馬鹿なの!!ねぇ!!」

俺、半泣きである。

「うん、ごめんごめん、遅れても良いから。な?泣くなよ。11日でも許してやるから。」

「うんありがとうってあれ?何で俺が悪かった感じになってんの。」




という件があって今である。




やばい、誕生日プレゼント何を買えば良いのか全然わかんない。
ケーキは甘党の俺だホール一つでも問題は無いためあまり甘く無いビターチョコのケーキを1ホール買ってミッションコンプリートしたのだが…。
やばい誕プレって何を買えば良いのか本当にわかんない。

高杉って何か欲しいもの有ったっけ?
アイツ家スッカラカンだから何も要らないんじゃないの。
そう思うほどに俺は高杉が好みそうなもの…高杉が誕生日に貰って嬉しいものが分からない。
こういう時は自分が貰って嬉しいものを選ぶのも一つの手だが、なにぶん俺も誕プレを貰ったことが無いのだ……。

(たく、アイツせめて5日前くらいに言えば良いものを…)

コレでは人に聞くことすらもう無理では無いか。
大体アイツは付き合う前からこういう事は言わないのだ。
高杉の方は俺の事をちゃっかり知っているのだが、(てかどうやって知るんだろう)俺はこういうのを合わせて高杉の口からあまり聞いたことが無い。

まあ、でもそれは聞かない俺も俺で悪いのかも知れないが…。

(あれ?コレってやっぱり俺が悪いの?)

だがアイツの事だ、自分の誕生日を忘れる…なんてことは無いだろう。

だからもしかしたら聞かれるまで待って居たのかも知れない。
アイツも、高杉も強がってはいるがまだまだガキなのだ。
上手にねだるなんて出来やしない。
まあ、明日で一歩だけ大人に近づくのだがそれでもまだ俺から言わせたら子供だ。

「子供…ねぇ…。」




************



*高杉視点




俺の誕生日まで後30分切った。

(怒ってたな…銀八…。)

そんなことを考えながら俺はソファーに膝をかかえて座りテレビを見た。
別に自分の誕生日を忘れていた訳ではない。
ただ言わなかっただけ。

言い訳を言わせて貰えるならば、なんだか言わなくても良いような気がしたのだ。
銀八なら別に言わなくても良いだろう。てか気に留めないだろうと…。
だからあんなに怒るとは思わなかった。

「・・・・。」

今更後悔し始める俺っていったい…。

別に祝われたくないとかそんなんじゃない。
ただ銀八はそんな事どうでも良いと思っている奴だろうから言わなかっただけだ。
そもそもアイツは誕生日プレゼントすら俺の中では貰ったのかどうか怪しいのだ。
銀八は俺のことは何も聞いてこない。
まあ、言わない俺も俺なのだが。

「銀魂高校不良のこの俺が…ああ、俺ってホント馬鹿。」

銀八が怒っただけで落ち込むって何だよおい。

「だから言ったろ、お前は馬鹿だって。」

俺は動きを止める。
今声がした。

俺は声のしたほうにガバッと振り返った。

「何でいんの。」

「合鍵。前渡したじゃん俺に、まさかそれも忘れたのかよ。」

「え?…あっ、ああそうだったな。」

お前大丈夫?そう言って銀八は俺の額に手を当てる。

「怒ってたんじゃないのか。」

俺は額に手を当てられたまま言った。

「何?お前は悪かったって思ってるの。」

銀八は俺の額から手をどけ、テーブルに袋を2つ置いた。

「別に。」

そう言って俺はイチゴ牛乳を取りにソファーから立ってキッチンへ向かった。
コレは、前に銀八が俺の家に来た時に置いて行ったものだ。
一人暮らしでかつ甘いものがあまり好きでは無い俺はコレを飲む事は無いため、かなりの量がまだパックの中に入っている。

俺はそれをコップと一緒に銀八へ渡す。

「おっ、今日は気が利くね。」

「…いつもと変わんねぇよ。」

そう言って俺はまたソファーに座る。

…さっきまで落ち込んでたのに、直ぐ立ち直った俺っていったい…。

いや違う、銀八が着たから強がってるだけだ。

(何だ俺、面倒臭ぇ。)

「おい、高杉。」

そんなことを思って居ると不意に銀八から呼ばれた。
俺はチラリと銀八が持ってきた袋を見る。
一つは大きい、って言うよりもはやケーキ1ホール分の大きさのものだった。
あれは見た瞬間からケーキだと分かった。
しかし二人で1ホールって大きくないか?

「誕生日おめでとう。」

「・・・。」

「何故に無言!!」

「っあ?いや別に。」

そう言って俺は今度はもう一方の袋を見る。
その袋は小さくて、バレンタインの店で売っているチョコのようだった。

銀八はその小さい袋を手にとって俺に渡した。

「ありがとう。」

「ん、どういたしまして。」

そう言って銀八は俺に袋の中を見るようにせかした。
俺は袋から四角い小さなさっきチョコのようだと言ったものを取り出す。
そしてリボンを解き包装紙をきれいにはがした。

「お前几帳面だな。」

「ビリビリに破くと片づけがメンドイ。」

「まさか面倒臭かっただけ!!そこは『銀さんのプレゼントだから…。』とか言わないの。」

「言わない。」

そう言って俺は箱を開ける。

「………凄いな。」

「でしょ!?高かったんだぜソレ。」

箱の中にはなんとも高そうなライターが入っていた。
このようだとどこかのブランド物だろう。
コレを買うのに銀八はもの凄く頑張ったのではないだろうか。

「お前タバコ吸うでしょ。」

「いや吸うけど、コレは使わねぇ…てか使えねぇよ。」

俺はまだ高校生だし、こんなブランド物を使う立場では無い。
てかなんだよ、タバコを吸うのにわざわざブランド物のライターを使う不良高校生って。

「良いよ、別に使わなくて。」

「え?」

そんな事を考えていた俺に銀八はそう言った。

「大人になったら使えば良いよ。」

「・・・。」

俺はソレを聞いて呆気に取られたような顔をする。

「…それまで…俺が大人になるまで一緒に居るのかよ。」

「お前が俺と一緒に居るなら。居るよ。」

「何だそれ。」

俺はライターを箱に戻し蓋を閉める。

「大人って20って事か。」

「そうなんじゃない?」

俺はその時は銀八おじさんだなと思って少し笑った。







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