*女体化





リヴァイには年下の恋人がいる。恋人は今年で17になる年齢で、付き合い始めたのはちょうど一ヶ月前くらいだ。

恋人との出会いは、彼女がまだ真新しい高校の制服を着ていた頃。そのときのリヴァイといえば、数多くの見合い写真を蹴っ飛ばして独身を貫くには、周囲の視線が鋭くなっていった時期だ。仕事に向かう途中、自転車を壊してその前をうろうろとしていた彼女に声をかけたのがきっかけである。普通であれば、リヴァイと彼女は付き合うまでにはいかなかっただろう。精々その場で別れてそれっきりだ。しかし、なにかお互い惹かれるものがあったのかそれから何回かの会話の後に親しくなって、出会って一年経った頃には付き合い始めた。

大体年齢が年齢であるし、そもそもリヴァイはおしゃべりでクソガキな高校生など眼中にもなかった。しかしながら、こうやって年下の高校生とお付き合いをしているのを客観的に見ると、人生何があるか分からないものだと、ロリコンの汚名をかぶせられたリヴァイは思うのだった。


【自転車下校】



会社にいる時は、会議に出ているか、あるいはパソコンの前にじっと座っているか、その二つである。リヴァイは鋭い目をよりいっそう鋭くしてパソコンを睨んでいた。その顔は部下をしかる時のそれで、ちらりと横目で彼を見た部下が小さい声で、ヒッとおびえた声を発していた。

リヴァイは目頭を押さえて、フーと息を吐く。昼食の時間以外をパソコンの前で過ごしたからか、目がとても疲れていた。彼は少し仕事をしすぎる傾向があった。それは趣味が掃除のような彼が掃除のほかにのめりこめるものなど、今まで仕事しかなかったからというものが理由である。

それに加え彼の性格上、途中で止めるという事が中々出来ないので、疲れたら休むということが出来なかった。だからよく目が疲れたり、肩がこったりというのはリヴァイにとっては日常茶飯事だ。どうしたわけか気まぐれでリヴァイの肩をもみ始めた恋人も、その固さにびっくりするぐらいには肩がこっている。要するに彼はかなり疲れているということだ。

疲れると人はそれが顔に出るものだが、それは彼も変わらないようで、それが顔に出ている。表情が険しいのは疲れているが故である。

疲れていると、憂さばらしがしたくてたまらなくなるのだが、その心情をぐっとこらえてリヴァイは仕事に集中しようとする。今おこなっている箇所が終れば、リヴァイの仕事は終わりである。まあ、それは部下が何かをしでかさなければ…の話ではあるが。

そう考えながらリヴァイはパソコンのキーボードに手をのせようとする。しかしその時ちょうど彼の携帯の着信音が鳴った。誰だと思いながら携帯を開いてみると、そこにはエレンという表示がなされていて、リヴァイはなんのようだと仕事を中断してメールを確認し始めた。

『今日の夕飯は何がいいですか?』

メールにはそう書いてあって、リヴァイはそういえば今の時間帯は高校生は学校が終っている頃だと気がついた。リヴァイは少し考えてから、『煮物と焼き魚』と返信する。

恋人であるエレンに、リヴァイは自分の家の合鍵を渡していた。そしてリヴァイもまた彼女の家の合鍵を貰っている。エレンは時々、リヴァイの家に夕飯を作りに来る。最初は家に行ってもいいかといちいち聞いてきていたのだが、好きな時に来ればいいと言った日から本当に好きな時に自由気ままにエレンはリヴァイの家に来るようになった。リヴァイはそれを嫌がってはいないし、むしろ好ましいと思っている。玄関を開けた瞬間に立ち込める料理の匂いとエレンの調理の時に立てる音、キッチンから聞こえてくる「おかえりなさい」という声のどれもがリヴァイのお気に入りである。逆にそれらがない日をリヴァイはとても空しく感じてしまう。つい最近までそれが普通であったのだが、それでも物足りないと感じてしまうのは、エレンの存在がもうリヴァイの生活の中に入り込んでしまったからだった。だから、エレンがテスト期間に入ってしまうと、メールも電話も会う事すら難しくなるので、テスト期間はテストに絶望する高校生とともにリヴァイもまた灰色な生活に絶望するのだった。





リヴァイが急いで帰れるように仕事を終らせようとしているとまた、メールの着信音がなった。エレンからのメールである。リヴァイが返信したのは20分前のことだったので、リヴァイのメールの返信にしてはいささか遅すぎる。リヴァイは何かあったのだろうかと、彼女からのメールを確認した。

『分かりました。ありがとうございます』

メールにはそう書いてあった。それと『お仕事頑張ってください』とも書いてあった。リヴァイはそのメールを凝視する。問題は『お仕事頑張ってください』にあった。

可愛らしい絵文字がついていたのである。しかもハート。リヴァイはそこから目を離す事が出来なかった。男勝りなエレンが絵文字を使ったというのが驚きだったし、それ以上に使った絵文字がハートマークだったという事にも驚いた。

リヴァイがメールしてから、その返信に20分という間がある。リヴァイはそれで全てを理解する。リヴァイにはスーパーで携帯とにらめっこしながら、恥ずかしそうにハートをつけるかつけないかで奮闘するエレンが容易に想像できたのだった。その姿を思うと、今さっきまでリヴァイを襲っていた疲れが何処かへ飛んで行ったのではないかと思うほどに軽くなった。たかがハートマーク、されどハートマークなのである。

リヴァイは、携帯をポケットにしまう。兎に角、仕事を早く終らせて恋人に会いに行きたかった。






リヴァイが自宅のドアを開けると、そこには可愛らしい薄いオレンジ色のエプロンを着たエレンが立っていた。エレンは笑顔でリヴァイにおかえりなさいというと彼から鞄と上着を受け取った。

「お風呂沸いてますよ。リヴァイさんが入っている間に料理温めておきますね」

そう言ってエレンはスタスタと上着をハンガーにかけに行った。

リヴァイが彼女に手を出したのは、告白したその日である。しかしそれは出会ってからちょうど一年がたった頃で、色々据え膳を一年間食べ損ねたリヴァイにとってはよく我慢したほうだと自分を褒めてあげたいくらいである。付き合い始めたあの頃、自分はもうお預けをされる事はないのだと思っていたが、現実はそう甘くないらしい。今日は水曜日で、彼女は明日学校であるし、自分は仕事に出かけなければならない。

リヴァイは脳内で、餌を前に待てを言われた犬を想像した。



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