【書きたいとこだけ書いたもの】



本気なんだ
ニコニコと笑っている鬼灯は、どう見たっていつも無自覚ドSを発揮している鬼神にはたくさんの目を使っても見えない。まるで、いつも電車で席を譲り、老人の荷物をもってあげ、子供に優しく語りかけてあげる、そんな金太郎さんみたいないい人に見えてしまう。そんなオーラを放っている。

どうしたんだと、問い詰めてやりたい気分だ。しかし、悲しいことに原因は分かっている。自分の昨日の発言が原因だと最初から。

言い訳をさせてもらえるならば、酔った勢いだったのだ。もう少し愛想よくニコニコしたらなぁ、と。そうすれば、付き合ってやるのに。そんな言葉がつい、酔った勢いで出てしまった。タイムマシーンがあったなら昨日の自分を殴ってやりたい。

鬼灯はニコニコしている。ついでにマジで金太郎さんみたいに優しい。いつも刺々しい口調が柔らかくなって皆気味悪がってる。目線で「何とかしてください!!」と僕に訴えかけている。

僕を見る鬼灯の目はいつになく優しい。僕はまさに蛇に睨まれた蛙だ。





2013/03/31 13:43


 嬉しかったんだ R-15
いつもはロープに縛られて身動きができなかった手が、今回は自由に使える。高杉はこともあろうかその手を俺の背に回した。ぎゅっと力がこもる手にどうすればいいのか分からず、させるがままにそれを受け入れる。

セックスの時、いつもロープで腕を縛っていた。毎回、縛っておかないと落ち着かなかった。奴が自分から離れていってしまいそうで、自分だけのものにしたくて、だから高杉とセックスするとき、俺は奴の手を縛って、自己満足していた。

でも今日、奴はそれを嫌だと言った。止めろと。俺は渋ったが、奴がどうしても引かなかったので根負けした。俺は別に縛って興奮していたわけではなかったので、今回ぐらい、まぁいいやと思ったのだ。だって本当は物理的に奴を縛りたいわけではないのだ。

突然、背中に痛みが走る。高杉が俺の背に爪をたてたようだった。痛かった。いつも縛っていたから感じたことのない痛みだった。仕返しに、はぁはぁと荒く呼吸する高杉の口に噛みついて唇を舐めてやった。高杉のチッという舌打ちの音が聞こえて楽しくなった。

ニッと笑って顔を近づければ、高杉はとても嫌そうな顔をした。俺はそれが愉快でまた笑った。愛しい、好き、お前の事がすんごく。口には出さなかった。俺も高杉もそんなこと言い合ったことなんかなかった。

「フッ……」

俺の口からそんな息がもれた。高杉は目を細めて、そんな俺を見ていた。高杉は背に回した手に力をこめる。俺を強く抱き締めた。

「大好き」

それは高杉にとって失言だった。奴はすぐにしまった!とでも言いたげな顔をする。俺はというと、動いていた体を止めて高杉のことを見ていた。見つめていた。奴と俺の目が合う。長い沈黙が二人を襲った。

俺は何故か涙を流していた。




2013/03/29 14:22


 悲恋
「叶わない恋をする方がおかしい」

そう銀時は、俺を見下ろしながらいった。その口調、笑っているその顔は俺を馬鹿にしているはずなのに、俺の瞳に写り混む銀時の目は何かを懇願するようで、その瞳から俺は目が離せなかった。

俺の恋を侮辱した銀時は、いつもと変わらない。憎たらしい笑みで俺を見下ろして、ウザいことこのうえなかった。胸の奥がムカムカして、腹立たしい。そう思うのに、何故かその顔が今にでも…いや、すでに泣いているように見えてしまって、何故か自分自身が泣けてきてしまった。

「馬鹿が」

そう、上からものを言う銀時はただ突っ立ったままで、しかしさっきのように笑ってなんかはいなかった。あの目のまま俺をきつく睨み付け、今にも殴り掛かってきそうな勢いがある。

俺は地面のコンクリートの冷たさを感じながら、瞳を閉じた。そこからはボロリと涙が次々と溢れてきて笑えた。銀時は、そんな俺を見ていた。ただ見ていた。

「恋はそんなもんだろ」

そんなもんなんだよ、銀時。



銀→高
2013/03/29 13:14


 自慢したくてたまらないR-15
部屋に響き渡るピッピッという音がなんとも間抜けだ。そんな間抜けな音が、俺が真似できないほど速くなり、もうピッピッという音がピピピピとなって五月蝿くてたまらない。機械音はどうも苦手だ。何だか勘にさわってしまって気分が悪くなる。

高杉が携帯に夢中で暇な俺は、何もすることがないので煙草を吸うことにした。煙草を口元に持っていき、くわえてから火をつける。肺いっぱいに息を吸い込んで数秒してからそれを吐き出した。下品だと思いつつ、やっぱりヤり終えた後の煙草はうまいなぁ、と考えてしまうのは終わったあとの余韻が甘ったるいからだ。

「誰とメールしてんの」

思ったより不機嫌な声が出てしまった。何だか高校生の子供相手に大人げなくて少し後悔。そんな、俺の心情を知ってか知らずか高杉はしれっとしながら、こちらも向かずに口を開く。

「ブログとツイッターしてんの」

高杉はそれだけを言って黙り混む。俺はというと、ああそうですかメールならまだしもブログとツイッターですか、いや、メールも嫌だけど…と、不満を煙草の煙と一緒に胸にためていた。つか、高杉君それ後で良くね?

「高杉…」

煙草を消して高杉にそろりそろりと近付く。目的地は噛み傷のある耳、俺がつけた。そこに口を当てると、高杉は可愛らしくピクリと肩を揺らした。それに俺は気分を良くして、調子にのって舌を出して高杉の耳を舐める。ああどうしようまた噛み傷をつけたい。そんな欲望がウズウズと俺の中を駆け巡る。

「ちょっと妬いちゃうんだけど」

そう、すねたように言ってから、腕を腰に回す。そして横目で高杉の携帯をチラリと覗きこんだ。


「…………なに、お前、そんな恥ずかしい記事書いてんの…」





今日、彼氏とねた(#^.^#)

てきなツイッター
2011/12/23 15:25


 嫌いなチャイム
俺が教師になった動機は不純している。他の教師のように、教師になるのが夢だった、とかそんな綺麗な感情でこの教卓に立っているのではない。

生徒のことなかどうでも良いし、他国の言語なんかも興味がない。正直言って、黒板に書いている字や、俺の発している言葉をいちいちノートに書き写す生徒たちが、こんな薄情な男に勉強を習っているということが可哀想で仕方がない。ああ、こんな教師をもって可哀想に。

俺が教師になったのは、忘れられない恋を引きずってしまった結界だった。想いを伝えられなかったことを後悔して未練がましく縛られているだけ。俺という人間はただ、想い人と同じ仕事が教師だったから、ただそれだけの理由でこの教卓に立っていた。

未練たらたらの状態で俺はこの職にについた。

学生の頃、いつも見ていた先生の書いた字、先生の声、それらを思い出す為に学校という所に居たかっただけ。

ほんの些細な繋がり、先生も教師で俺も教師。その些細な繋がりのためにここに立ってる。

教科書の単語の発音を確かめていると、俺の居た学校とは違うチャイムの音がした。授業の終わりを告げるチャイム。俺の一番嫌いなもの。授業をしていた先生が居なくなるから、嫌い。だけど今は先生がいない、だから今は別にどうでも良い。

ああ、この中にも、終わりのチャイムが嫌いな奴がいるだろうか?

そんなことを思って俺は教室を後にする。

2011/12/14 16:12