くだらないあれこれ、そのに
*現パロ *リクエスト(味噌汁を飲む8と10)
トントン、トントンと規則正しく外の階段を登る音が聞こえる。やがてその足音は家の前で止まった。
ピンポーンという間抜けな音とこれまた間抜けなスコール? と呼ぶ声が聞こえる。はあ、とひとつため息。
「……ティーダ」
玄関扉を開けるとティーダが苦笑いしながら立っていた。
「ね、今日泊めて?」
「……何もないぞ」
「いいっスよ、ほら」
そう言ってティーダはコンビニの袋を持ち上げてニコッと笑った。用意周到なことだ。はあ、とため息をつきながら身体を傾けるとティーダはおじゃましーすと俺の部屋に入り込んできた。
「相変わらず殺風景な部屋」
(だからそう言ったじゃないか)
どかっとソファに我が物顔で座り、コンビニで買ってきたものを並べ始めるティーダに無言でジュースを注ぐ。
「あれ? オレの好きなオレンジジュースじゃん。えっなに、用意してくれてたの?スコールってば、優しいッスね」
「……アンタがこの前置いていったやつだ」
「あれ、そうだっけ?」
そう言って笑いながらティーダはグラスを傾けた。コーヒーメーカーを動かす。時間は8時過ぎ、どうせティーダは夜までうるさいだろうからいまからコーヒー飲んでも大丈夫だろう。
「スコールはもう飯食ったの?」
ティーダがそう言いながら台所へと入ってくる。片手にコンビニ弁当。それを電子レンジに放り込むと、彼は勝手知ったるままに弁当を温め始めた。
「……とっくに」
「ふーん。何食ったんスか?」
「……白米と、味噌汁と、生姜焼き」
「へー、普通」
「……」
ガスコンロに残っていた味噌汁の鍋をティーダはふーんと覗いた。
チンっという音が聞こえて、ティーダが電子レンジの扉を開ける。湯気と弁当の匂い。熱い熱いと騒ぎながらティーダはそれを抱えてリビングまで走っていく。
「いただきまーす!」
という元気な声が聞こえてきた。パキンと割り箸を割る音。俺は淹れたコーヒーに牛乳を注いでティーダのいるリビングに向かった。
ガツガツと食べるティーダを品がないと思って見ていたらなんスかとこっちを見てくる。
「……下品だなと思って」
「スコールしかいないからいいんだよ」
ふん、と鼻を鳴らす。
あ、とご飯粒を口周りに付けたティーダが声を上げた。
「あ、なあなあ、スコール。あの味噌汁、飲んでいい?」
「別に構わないが」
「やりぃ! ありがと!」
そう言って彼は立ち上がると鍋に火をかけ、棚から茶碗を取り出していた。俺はそんなそいつを見ながらティーダが買ってきたコンビニの袋からチョコレート菓子を取り出して開ける。ああ、甘い。
「あー! スコール! ちょっと!」
どかどかと味噌汁片手にリビングにやってきたティーダは勝手に菓子を開けた俺に何してんだよ! と声を荒らげた。
「あとで一緒に食べようと思ってたのに勝手に食うなよな」
ひょいっともう一口放り込むとちょっと! と彼のムッとした声が聞こえ、彼はそのまま菓子袋を掴んで俺の手の届かないところまで運んでしまった。お菓子ひとつにムキになるティーダが面白い。同い年なのにこんなに子供っぽいティーダを見ているのは飽きない。
味噌汁は豆腐となめこ。そんな大したものじゃないが、ティーダは俺の作った味噌汁を飲んで美味しいと感想を述べてくれた。
「オレ、スコールの作る味噌汁が好きでさ。今日残ってて、ちょっと嬉しかったんだ」
照れくさい。俺が作ったものを食わせるのはティーダぐらいしかいないが、実際は俺よりもティーダのほうが料理の腕は上手いのだ。
「……アンタの方が上手いだろ」
「オレはスコールの作る味噌汁がいいんスよ」
そう言ってずずっと味噌汁を飲む。白米もまだ炊飯器に残ってるぞ、と言えば食べていい? と台所へかけていった。
「あ、ねえ、スコール。味噌汁、おかわりしていい?」
台所から顔をひょこっと出したティーダにああ、と返事をすれば彼はやった! と声を上げた。今日は少し多めに味噌汁を作ってよかったと俺はぬるくなったコーヒーを飲み干した。
2017.5.7
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