何もないのだけれど
*R18

「ん、んあっああっ」

ぐっと下半身に違和感。何度この行為を繰り返しても慣れない痛み。ティーダ、ティーダと目の前の男がオレを呼ぶ。そんな呼びかけに応えられる余裕もなくて。オレは焦点の合わない目で彼を見た。

「ティーダ、息をしろ」

そんなこと、言われたって。痛い。酸素を求めてオレは溺れるように彼にしがみついた。熱い。全身が熱い。相手の熱もオレの熱も溶けてぐちゃぐちゃになるようで。

「息をしろ、ティーダ」
「んっ、あう、……あッ、」

グルグル、グルグル、彼の声が頭の奥に響く。息、息……? 息ってどうすんだっけ? あれ? そんなこと思っていたら、身体から熱が出ていく。

「……っアッ、ああっ、はあ、はあ」
「ティーダ……」

スコールがオレの中から出ていったんだと気がついたのはようやく息をして、スコールの顔をまともに見た時だった。オレに覆いかぶさったまま静かに俺を見つめる彼。いつものクールな顔に、眉間のシワ。大丈夫か? とその顔が訴えている。

「ごめん、大丈夫だから」

そう言って彼のくちびるをオレのくちびるで塞ぐ。スコールの形のよい、そのくちびるに。舐めて、開けてと訴えれば、彼の舌がゆっくりと入ってくる。とても、とても甘いその舌。誘われるように絡めて、探って、貪りあって。ふっと離すと彼のくちびるの端から零れた唾液が垂れた。卑猥だなあなんて思っていたらもう一度彼が降ってきた。

「ん、ふぁ、ふ、ぁあ……」
「……っ、ん、ふ、」

目を開くとスコールがいる。血に飢えた獣のような顔。こんな顔、知ってるの、オレしか知らない。嬉しくて彼の頭を抱えてもっとと強請るように舌を絡めた。もっと、もっとスコールを感じたい。熱が引いて彼が見つめる。オレも見つめ返す。

「ティーダ……」
「大丈夫、大丈夫だから。スコール、もっと、もっと」

だってこんな熱、もう止められない。もっと感じたい、もっと受け止めたい。それはスコールも一緒で。本当にいいのか? みたいな顔してるけど、内心もうたまらないんだろう。にやりと笑えば、彼はあのちょっと困ったあとのような、微笑みを返してくれて。この顔が好きなんだ、と息を吐いた瞬間熱塊に全身を貫かれた。

「ああっ、スコッ、あっああっ」
「んっ……くっ、ティ……ダ」

熱い、熱い、この熱が、オレを満たしてくれる。動くぞ、という声にわかったと首を降る。揺れる、揺らされる。ああ、ああ。キスと挿入と、ピストンと。その全てがオレに快楽を重ねていく。スコールのその顔も、快楽に満ちていて。オレで、感じてくれているその事実が嬉しくて。噛み付くようなキスに、その舌を追ううち、気持ちがよくて思考もどうにもどろどろに溶けていった。ああ、スコール、スコール、全身で彼を求める。彼もまたオレを求める。熱が大きくなる。解放を望む獣は一際大きく嘶いた。びくんと揺れる身体に荒い息遣いだけが部屋を支配する。スコールを見れば汗にまみれたその顔に少しの疲れと解放感を感じていて、オレはといえば肩で息をしながらスコールを見つめていた。
この行為になんの意味もない。オレは女じゃないから中で出したってスコールの子供を孕めるわけではない。それを言ってしまえばこれは死んだ行為なのだけれど。気持ちいい、ただそれだけでいいんだ。髪をかきあげるスコールが格好よくて、ぼうっと見つめていたら、もう一度、いいか? と聞かれた。ばかと頬を叩いたら(そんな力はないから、ほとんど撫でつけたようだ)、彼はあの微笑みのまま、オレの口を塞いだ。

2017.4.8



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