まだ、知らない。

最近テストもなく、学校が先生の会議のおかげで山本も部活がなく、早く終わった晴れた日の午後、山本が公園で野球しようぜ!!とか急に言いだした。


「いきなり野球しようぜ!!なんて山本言い出すんだもん、びっくりしたよ〜」

「あはは、わりーわりー!だってさ、こんなに晴れてるのに部活出来ないんだぜ?もったいなさすぎるんだよなー」

「俺は早く終わっただけで嬉しいのに、山本はやっぱり野球好きなんだなー…」

「10代目、野球バカに付き合う義理なんてないんですよ、素振りさせときゃいいんですからこんな奴」

「い、いいんだよ獄寺くん!どうせならみんなで楽しくやりたいし!!と言っても俺が一番役立たずなんだけどね…ハハ」

まぁ、まず3人では野球は出来ないからキャッチボールとか素振りをみんなでやることにはなるんだけど、やっぱり1人でやるよりみんなでわいわいやった方が楽しいに決まっている。それに、野球をする山本の姿は男友達の俺から見たってかっこいい。
本気を出した10代目にかなう奴などいませんよ、と力説する獄寺くんに苦笑いをしながら山本をみると、嬉しそうにバットとミットをカバンから出していた。なんだか妙に嬉しくなってきて思わず空に向かって伸びをしながら叫んだ。

「さー!!やるぞー!!」






…とは言ったものの。

「そこはな、ボールがビューンときたらブンって振って、ガキンと当ててそのままグワーと振ればホームランなんて簡単だぜ!!」

「いいや、これだから野球バカは信用ならないんですよ、ホームランを打つためにはボールに対して入射角度が…」

ボールを軽くバットに当てようとしただけなのに全部空振り。内心あぁやっぱり、とか思ってたんだけど、山本と獄寺くんは納得がいかないらしくて。俺がなんとか打てるようにおしえてくれるのはありがたいんだけど、山本節は相変わらずわからないし、獄寺くんのは理論的すぎてわからないし!!

「ふ、2人とも大丈夫だから、もう一回やらせて!!」

「そうか?じゃあ行くぞー」

ほいっとすぐそばから山本が投げてくれたボールを(遠くからあんな速い球投げられたら死んじゃうからね)、ひ〜!!と思いながら一気に振った、ら、

ガキンッ、ガシャン!!

見事に当たって、しかし公園に面した家の庭に吸い込まれていった。

「さすがです!!!見事なホームランでしたよ!!」

「全然見事じゃないから!!あ〜、もう!!!なんでこうなるんだ〜!!!」

「ツナやるなぁ!!」

「山本も笑い事じゃないから!!」

またリボーンに怒られるよ…。ああもう泣きたい。
頭抱えてうずくまってたら、獄寺くんが取りに行ってきますね!!とダッシュで行ってしまった。俺も行かないと。

「山本、オレも行ってく…って、わ、」

「あとはもうちょっと腰が使えたらいいんだけどなー」

振り向いて山本に話しかけた途端、急に山本が抱きついてきた。正確には腰をその大きな手のひらで掴んできた。

「ちょっと山本?!」

「ほら、こうやってな」

腰を掴んだ手の動きに合わせて身体が回転する。背中に山本の身体がくっつくかんじでちょっと暑い。教えてくれるのはありがたい、ありがたいけど…!!

「や、山本、くすぐったい…!!」

「あ、わりーわりー…なんちゃって」

「え、…うはははっ!ひゃ、やめ、くすぐった…!!」

あろうことか山本はそのままくすぐってきた。俺はすぐに絶えられなくなってそのまま山本にもたれかかって。

「ひー!山本、もうやめ…」

「ははっ、弱いなーツナは」

抗議するために振り向くとすぐ目の前に山本のドアップが現れて、俺は思わずとまってしまった。その表情は柔らかい笑みを浮かべていて、瞳の奥から楽しいと語りかけてきていた。心の奥がドキリ、音を立てた。

「…ツナ」

「…っ!あ、ごめ」

「嫌だったか?すまねーな」

「だ、大丈夫、ほら、謝りに行かないと、」

なぜか山本を直視できない。顔が熱い、きっと真っ赤な気がする。え、え、なにこれ。

「そうだな、俺たちも行くか」

「そうそう、行こ行こ」

山本のがわらった気配を感じながら、やっぱり顔を見れないまま俺はボールをとりに走りだした。



この時、俺はこの先2人の関係がより密接に、甘い関係になるとは、まだ、知らない。







山ツナ闇鍋企画様に提出させていただきました!!




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