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――ここはどこだ?
僕の目の前に広がるのは煌めく大海。足元には白い砂が敷き詰められ、太陽を倍にして照り返してくる。
雰囲気的には無人島、か? ……そうだとすると、とてもやっかいだ。自分の身に起きたことを除けば、ここはすごくいいところだとは思う。自然は多いし、空気が美味しい。
しかし、人生で無人島に来たのはこれがはじめて。日々の暮らしすらグレミオ任せなのだから、一人でこんなところで生きていけるかというと、正直自信ない。
どうすれば帰れるのだろう。瞬きの手鏡はあるけど、あの状況ではこれを使っても帰れない気がする。
そうなれば、しばらくの間かもしれないが、やっぱりここで一人で生活するしかないのだろうか。困ったことになった。
「――サガ、そんな顔することないよ。せっかくいいとこに来たんだし」
ふいに聞き慣れた声が聞こえた。その声の主を知っている。別に知り合いたくなかった、というか、できれば一生知り合いになりたくなかったあの男。
僕は振り返るべきか逡巡するが、どっちにしろあっちから絡んでくる。ペースに呑まれるのはごめんだ。
恐る恐る後ろを振り向くと、完全バカンス体勢でヤシの実吸ってるバカ王子。
僕はいるはずのない存在がこの場にいることに動揺を隠せない。
「なんであんたもここにいるんだ!!」
ため息より先に出た怒りの声が彩り鮮やかな鳥たちを羽ばたかせた。
僕らの無人島日記