どんよりと厚い雲に覆われた灰色の空をサングラス越しに見上げる。12月という冬真っ只中のこの時期に、こんな天気のなか外で体育、それも野球だなんて寒くて仕方がない。
雪の中でプレイすることもあるアメフト漬けの俺でも、ぶるりと寒さに身を震わせた。隣では俺と同じくアメフト部員の棘田がしゃがみ込んでガタガタと歯を鳴らしている。

普段の威勢のよさが寒さによりすっかり奪われている棘田を見ながら、別種目に取り組むクラスの女の子達に想いをはせる。
棘田じゃなく可愛い女の子達が横に居れば寒さも多少は紛れただろうに、とやるせない気持ちで白い息を吐いた。

「…天間。お前カイロ持ってただろ」
「ああ、女の子達がさっきくれたんだ」

元は女の子が持っていただけあって、有名なキャラクターがプリントされた可愛らしいものだ。この寒空の中、そのカイロのお陰で俺の指先は暖かさを保っている状態だった。

「それ寄越せ」
「やだ」
「ケチな野郎め!人が寒さで弱ってるってのに」
「お前寒さに弱いなら、自分でカイロくらい常備しておけよ」

そもそも棘田はクォーターバックというポジション柄、指先のコントロール力が求められる。冬は指先を冷やさないよう、自分で対策することだって大事なはずだ。カイロの一つや二つ、持っていて当然なんじゃないのか。

「それが出来ないんだよ」

棘田は苦々しげに呟くと、指先を暖めようと白い息を吐いて当てる。

「出来ないって?」
「…カイロが欲しいのはやまやまなんだけどよ、持ってると五月蝿い奴が居るんだよ」

俺を暖めるのは自分の仕事だ、そんなもの必要ない、ってな。そう続けた棘田に、俺は思わず口を開け放した間抜けな顔になった。
こいつ、今サラリとのろけやがった!
まさか棘田に、そんな可愛いことを言う彼女がいるとは驚きだ。世の中には物好きな人間もいるんだな。

「だからそのカイロ寄越せ!」
「断る!」

ただでさえ他人ののろけなんて聞いてて楽しいもんじゃないのに、棘田からのろけ話を聞かされるなんて余計にムカつく。
とりあえず、絶対にカイロは渡すまいと決めた。

全く、棘田のくせに生意気だ!




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