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注※アオギリ勢揃いしてます




最近わたしは"お洒落"というものに目覚めた。今までは必要最低限の機能性を重視したシンプルな服装に、勿論アクセサリーなどの類いは手にしたこともなかった。

それがこの間初めて、バースデーのプレゼントにとニコから貰ったネックレスを着けて、恋人であるタタラさんの所に行った時に思いがけず称賛の言葉を貰い、味をしめてしまったのだ。

それにしてもファッションに対する知識が乏しく、誰かを参考にしようとまず最初に思い浮かべたのはやはりニコだったのだが、本拠地にいないことも多く見当たらない。

そこで先にヤモリとナキの所へ行くことにしたという訳だ。


「失礼しまーす」

「なんだオマエ!ってなまえか」

「私で悪かった?あれ、ヤモリは?」


鉄製の重いドアを押し開け中に入ると、がらんとした殺風景な部屋にいたのはナキ一人だった。


「神アニキかぁ?アニキなら今はいないぜ!お、さ、ん、ぽ、中!だ!」

「なんだ、置いて行かれたんだ」

「ちげえっ!この部屋の留守を任されたんだ!俺にしか出来ねえ大事な仕事だ、ってアニキも言ってたしな!」


えへんと音が聞こえてきそうな程胸を張っているが、十中八九置いて行かれたのだろう。ヤモリも流石にナキを動かす術を網羅しているなあと感心しつつ、本題に入る為に口を開く。

この子に分かるようにどうやって話そうと考えていると、ふと彼の白いスーツの胸元に目がいった。


「ナキ、それ何?」

それ、と胸にぴかりと光る金色の飾りを指差すと、ひとつぷちりと外して私の目の前に持ってきて見せた。

「これはな、神アニキがくれた…バンズってんだ!こうやって後ろで留めると、」

「おお!」

「ナキ、"ピンズ"だ。なまえもナキの言う事を鵜呑みにしない方が良いよ」


帰還したヤモリが、呆れた顔でこちらを一瞥する。ナキの頭のネジが少し緩いことを忘れていた訳ではないが、自分が全く知らない事柄を尋ねるには向かない相手なのは確かだ。


「へえ〜ピンズかあ、綺麗だね。きらきらしてて」

「気に入ったならなまえにもあげようか」

じゃらりと音のする箱を覗き込むと、沢山のピンズが詰まっていた。ゴールドだけではなくカラフルな物もある。


「いいの?」

「うん。沢山あるからね」

お言葉に甘えて、どろりと血液の融解したような真っ赤なハートマークを頂戴する事にした。早速ナキの真似をして胸元に飾ると、光が反射してきらりと光った。

「おっ良いじゃねえか!似合ってるぜ!」

「ほんと!ヤモリありがとう!」


あまり長居しても悪いのでそろそろお暇しようと手を振ると、ぱしりとナキに手を掴まれる。

「どうしたの?」

「オマエ、爪白くしたんだな!すっげー格好いいな!!!俺も好きだぜ、白!アニキの色だ!」


"アニキの色"と言われた白だが、実はタタラさんの為に白くしたのだ。あの人の為に爪を染めたと言ったらまた褒めて貰えるだろうか、と淡い期待を込めて。

この足でタタラさんに見せに行こうともう片方の手を扉に手を掛けた時、何故か外側から自動的に開いた。


「ナキ、その手を離せ」

「おん?」

「離せ、と言っている」


アニキアニキ、と騒いでいたその身体は一瞬にして部屋の奥に叩きつけられる。今、私の真後ろに立っているタタラさんによって。

ちらりと上を見上げれば、不機嫌そうにも無関心そうにも見える表情の彼の双眼とぶつかった。

「なまえ、来て」

そのまま無言で手を引かれる。タタラの自室まで来ると、ダンッと音を立てて彼の赫子が私の真横の壁に減り込んだ。


「手が空いたのに、何ですぐ俺の所に来なかったの」

そして何とも理不尽な、しかし少しばかりのつむじ曲がりが含まれた問いに自然と口角が上がる。

「ごめんなさい、でも見て下さい。これヤモリから貰ったんです」

胸の蕩けたハートを摘んで見せる。今度こそ不機嫌そうに片眉を上げたのを見て、急いで更に続けた。


「それとこれです」

「……マニキュア塗ったんだ」

「はい。ナキはヤモリの色だって言ったんですけど、やっぱり白はタタラさんの色です。このピンズと合わせるとタタラさんみたい」

「俺?」


マスクと服、瞳と髪。赤と白は絶対にタタラさんの色だ。黙ったまま目線を少し下に下ろすと、壁から赫子を引き抜いた。


「どうですか?気に入りましたか?」

「…俺は爪の色なんてどうでもいいと思うけど、自分の女が俺の色に染まるのは、悪くない」

相変わらず仏頂面のままだが、私からしてみれば今のは120%お褒めの言葉だ。更にそのまま私との距離を詰めると、逃げられないように腰を抱き寄せられる。


「そんな事より、無駄になった俺の時間どうしてくれるの」

「そうですね。それではこうしましょう」


背伸びしてタタラさんのマスクを取って、色素の薄いその唇に口付ける。仕掛けたのは此方のはずなのに、私の呼吸はすぐに呑み込まれる。

目の前で彼の瞳が愉しげに細まって、どぷりと心臓から血液が一気に流出する。ハートが熱くて熱くて、私まで融けだしてしまいそうだった。



融解熱
(タタラさんって案外ヤキモチ焼きですよね)
(煩いよ)


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