mio tesoro
まさか、みんなと離れているときに襲われるなんて!
どうにか人目の付かない路地裏にスタンド人形をおびき出し、SP達の力を借りて撃退したはいいが、それを町のゴロツキらしい人に見られてしまった。
「てめぇ、何もないところからどうやって爆発を?新型の武器か?」
背後を取られ、羽交い絞めにされてナイフを突きつけられた。
SP達を出しても構わないが、さっきの戦闘で私も消耗している。下手に動けない、な んて。スタンドがないと何もできないなんて、悔しい…!
そしてなによりこの人をどうにか口止めしなければ、きっと「スタンド使いがこの町にいた」とすぐに広まってしまうだろう。そうなればみんなを危険に晒す可能性が高くなってしまう。
どうにかしなければ…!
グッと拳に力を入れた、と同時に私を押さえつけていたゴロツキの力が緩み、彼は私の足元に倒れた。
「…し、シャボン玉…?」
あたりに漂うシャボンに触れると、ばちり、と痺れた。これは、このシャボンには前にジョセフさんから見せてもらった波紋と同じものが流れているのか。
「怪我はないかい?シニョリーナ」
突然 の声に思わず体をびくつかせてしまった、が、優しい声だったのですぐに逃げようとは思わなかった。
顔を上げると、青年が微笑んでいた。
「た…すけてくれたんですね…。ありがとうございます」
「気にしないでくれ、当然の事さ」
ふわりと彼から漂うシャボンの香り。やはり彼が波紋入りのシャボンでゴロツキを倒したのだろう。
「心配するな、殺しちゃあいない。ただ多少記憶は抜けているかもな」
「波紋ってそんな事も出来るんですか…?」
「波紋を知っているのか?…ああ、記憶や人格を多少ならば操れる。難しいがな」
そういうものなのか。ジョセフさんから波紋について詳しくきいたわけではなかったので知らなかった。便利なものだな。
「…その黒髪、ああ、爺さん似なのかもな」
突然髪に触れられ、少し驚いた。
優しそうに、そしてうれしそうに微笑む彼は金髪だった。
「爺さんであり、父であり、兄弟の色だからな。それに…」
「それに?」
「俺の大切な人と同じ色だ」
どこか、遠い記憶を思い出しているかのように悲しいようなさびしいような、しかし優しげな表情で笑った。
「もしかして、お兄さんの恋人さん?」
「ママミーア!勘弁してくれ ッ!」
彼は眉間にしわを寄せ、やや大げさとも思えるほど不快感をあらわにした。
「男だ、オトコ!」
「ご、ごめんなさい」
謝ると、彼はまた微笑んでくれた。
「…いや、俺の言い方が悪かったかもな。そういえば、先生も同じ色だったな…」
きけば、その男の人と彼は先生のもとで修業をしていたらしい。
とてもうれしそうに先生のことを話し、男の人のことは少し毒を含みながら話してくれた。
「…さて、もう行かないと仲間が心配するんじゃあないのか?」
「えっ…」
あわてて時間を確認すれば 、集合時間まで残りわずかだった。
「えっと、あの、ありがとうございました」
「Grazie!それはこっちのセリフだぜ、シニョリーナ。次はゆっくり食事でもしたいものだな」
「はい、それでは、…えっと…」
「Ci vediamo!また会おう、mio tesoro」
「また会いましょう、ですっ」
じゃあな、と彼は私の向かう方向とは逆へと歩いて行った。
私は彼の背中に一礼して、みんなの待つホテルへと向かった。
戻る