子供の悩み、大人の答え

戦場を駆ける女子高生ってどうなんだろう。

ぼやいたところで半世紀とか一世紀とか前の人間には女子高生なんて単語通じないよな、と本末転倒というかなんというか。
なら、貧民街育ちのゴロツキと元ドイ ツ軍大佐とうら若き乙女の組み合わせならどうなのか。

「まあ、人さらいには間違えられるかもな」

ははは、と乾いた笑いをもらすスピードワゴン。

「攫ってくれてもいいんだけどね」

あなたたちとならどこへでも行ける気がするよ、という意味を含んでそう言えば、シュトロハイムが私の頭を少し乱暴に撫でた。

「そういうことは駆け落ちするときに相手の男にでも言ってやれ」

「そのつもりで言ったんだけど」

大好きな二人に攫われることをひそかに期待していたのだが、この二人は私のような小娘なんて興味がないのだろう。
そう思いながら二人の反応を窺えば、シュトロハイムは口角を上げ愉快そうに笑っていた。一方スピード ワゴンは狼狽えてしまったようで眉間にしわを寄せていた。

「あのな、そういう冗談は…」

冗談、まあ本気にしてはもらえないだろうな、と薄々感じていた。
私の性格がそうだから仕方がない。人を笑わせるのが好きなのだが、他人から見れば人をからかうのが好きなように見えるだろう。
それから、彼らはとても優しいから、いずれ離れ離れになってしまう私とどこか距離を置いている。
あと、男女の差もあるのかもしれない。
承太郎や花京院と話していてもどこか溝を感じるというか。そのたびに憂鬱になっていたら大変なので最近は考えないようにしていたが、そうだ、今私がいない間に彼らは絆をますます深め合っているかもしれない。そうなると再開したときにうま くやっていけるか心配になる。
いっそのこと、友情はあってもなくても構わない。きっと承太郎なんかは日本に帰った途端に私とは他人のふりをするだろうから。それより今心配なのは命を預けられるかなのだが、信用を失うことは死に直結する。そのためにも早く潜水艦を手に入れてジョースターさんの期待にこたえなくては。

「…ィ、…オイ!」

「へ?」

スピードワゴンに頬を抓られたところで私はやっと自分が呼ばれていたことに気が付いた。
周りの声が聞こえなくなるほど考え込んでしまっていたのか。油断しすぎていたな、と思いつつスピードワゴンとシュトロハイムに申し訳ないとうなだれた。

「まったく、いきなりトンデモねぇこと言ったと思えば今 度はだんまりか」

「ご、ごめん」

素直に謝罪すれば、二人は笑い始めた。
訳が分からずにぽかんとしていると、シュトロハイムにまた頭をなでられる。

「さっきの問いの答えだが、」

女子高生とゴロツキと軍人の話だろうか。

「普通に考えれば、俺たちは大人の男なんだから子供のお前は守ってもらう立場だ」

「でも、」

「ああ、俺たちはスタンドが見れねぇ。それにお前は十分に強い。そうだろ、名前?」

強い。
これはきっと、力じゃあない。精神的な強さのことを言っているんだ。
二人は私が悩んでいることを知っていたからこそ笑ったのだろう。
強い、と期待されてしまったからには自分の力で立ち直ろ う。
そう、私は二人に信頼されるほどに強いのだから。

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