ラナンキュラスの君
「名前も近距離パワー型なんだよな」
端の方で本を読んでいた名前は顔を上げ自身の名を出したポルナレフを見た。
急に話し掛けてくるものだから少しばかり戸惑ったが、どうやらスタンドの話らしい。…"も"ということは誰かと比較しているのだろうか、一行で自分以外の同じスタンドといったら彼しかいない。窓際で煙草を吸っている承太郎に視線を向ければ何かを察したのか深く煙を吐き出し帽子を目元まで被り直していた。名前は視線をポルナレフに戻し、話を続ける。
「……急になに」
「同じスタンドタイプだろ」
どっちが上か気になったりしないのか?名前と承太郎をニヤニヤとしながら交互に見るポルナレフ。
その言葉にややあって固まっていた名前だが、途端 興味が失せたのか どうでもよさそうな顔を露にすると本に視線を戻した。承太郎に至っては新しい煙草に火をつけ、ポルナレフの発言なんて最初から聞いていないといわんばかりの態度である。予想外の反応に それはもう楽しくないポルナレフ。発破をかけてやろうと考えた彼は承太郎ではなく、まだわかりやすい(といっても名前も相当だが)彼女に向かって言葉を継ごうとするが それよりも早く視線を本に向けたまま声を発したのが「簡単でしょ」名前だった。
「私のスタンドはパワーはあるけど精密動作性に欠けてる、けれどスタープラチナは精密動作性 スピード レッドガーランドには劣るけどパワーもあるし。なにより空条くんの冷静な判断力があるからこそスタープラチナよ、わかりきったことだと思うけど」
珍しく滑舌な彼女に目を丸くしたが それ以上に客観的に見た観察力、洞察力に驚いた。前々から侮れないとことが多々あったが 改めて再確認させられる。話題に上がっている もうひとりの人物に身体ごと向けば口許を上げた承太郎が目に入った。
「てめぇの精神攻撃ほど えげつねぇもんはねぇ」
「当たれば、ね」
「そこんとこは"お前の冷静な判断力"でどうにかなるだろ?」
「……ホントいい性格してるよ」
「性格がまんまスタンドなお前にいわれたかねぇよ」
「(え、なにこの誉め殺し合戦)」
ポルナレフは交互にふたりを見る。名前はいつの間にか本を閉じ 笑んでいて、承太郎は顔には出さないが何処か楽しそうな雰囲気を出していた。「(なんだこの雰囲気 居たたまれない!)」甘ったるい感じは全くもってしないが、やはり同じタイプのスタンド同士 合うところがあるのだろう。そこには同属嫌悪な感じはなく、むしろ同気相求というべきか。いつの間にか名前の正面に座っていた承太郎を遠目に見つつ、普段から無口な二人が和気藹々(?)と話す光景は微笑ましいものだとジョースターさん達ならいうだろう。が、生憎とポルナレフは思うはずもなく。
「買い出し行けば良かった」
ガクリとテーブルに突っ伏した彼は
それ以降 考えるのを止めた。
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