【自殺志願者】









  “ここから飛べたなら
   どれだけ楽だろう”






  そう何度も思った


  そう何度も考えた







  だけどいざ

  塀を乗り越えて
  地面との距離を
  目の当たりにすると

  いつも僕の足はすくんだ。




  “死にたくない”と










  計190回、
  夢の中で僕は僕を殺した。





  そのうちの189回は
  どれも自殺未遂だった。








  “死んでも死にきれない”


  その原因は僕にあると
  わかっていた





  190回目の夢の中で
  その原因は
  より明らかとなった。







  屋上にも行かず

  剃刀も持つことなく

  縄を首にもかけず

  睡眠薬を含むこともなく




  ただ死を恐れ
  今と向き合うことを
  選んだのだ。









  僕は呆れた。



  “自分には
   死ぬ勇気すら
   持てないのか”と







  それと同時に
  僕は自分の本心を悟る





  死にたいんじゃない、
  死と向き合いたいわけじゃない、




  僕はただ

  今から逃れて
  楽になりたかった
  だけなんだと。









  きっと僕はもぅ望まない。





  死を恐れる者に
  自殺志願する権利など
  どこにもないのだ



  残るはきっと生き抜く権利。










  もし次に
  191回目が訪れたとき



  それはきっと

  僕が僕として生きた
  最期の時だろう。






(20/126)


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -