[疑心暗鬼。]













 何も見えなくなってしまった










 空の青も

 人の顔色も

 好きだった君の瞳の色も

 時計の赤い秒針も





 ただ白黒でしかない。














 当たり前に「綺麗だ」と
 思えていたはずの星の輝きも

 今では単なる白でしかない






 雨上がりによく見る
 無色透明な水溜まりも

 今では単なる黒でしかない










 あんなに色鮮やかに見えてた世界は
 こんなにも暗いものだった





 乏しいものだった

 寂しいものだった

 悲しいものだった



 息をするのも苦しいほど
 辛いものだった














 今まで見てきたものは全部
 僕が作り出した「まがいもの」で


 本当は白も黒もこの世には無くて







 僕がここにあることも
 誰かの長い夢の中にいるんじゃないか



 そんな疑いさえ沸き上がるの。


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