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※2022年尾形上等兵誕生日
※金塊争奪戦終結後の完全捏造
※「堕ちる偶像に祝福を」の未来if
※一部、ロシア語変換使用
石造りのギリシア式建築が軒を連ねる。凍える寒さを物ともせず、今日も街は大いに賑わっていた。商店。銭湯。写真館。飲食店。大勢の日本人の中に、露西亜人がちらほら混じる。
異国の言葉が学べる、東洋学の中心地。
ここは極東露西亜。ウラジオストクの日本人街。私と尾形さんが暮らす場所だ。
長かったようで、短かった金塊争奪戦は終結。混乱の最中、私と尾形さんは北海道を脱出した。
「寒い所は、もう懲り懲りだ」
これは尾形さんの主張だった。
北海道。樺太。露西亜。常に寒さがつき纏う環境に、嫌気が差していたのかもれない。根無し草みたいな生活を送りながら日銭を稼ぎ、蒸気機関車を乗り継いで南へと下る。目的地は、私達のことを知らない、見ず知らずの土地。
犯した罪から逃避するとは少し違う。静かに暮らしたい――が近いのかもしれない。
着のみ着のまま本州を経て、遂に九州の長崎に到達した。長崎から船に乗り、遠路はるばるウラジオストクまで来てしまったのだ。帰る場所も、故郷で待っている人もいない私達は、ここを終の住処と決めた。寒いのは嫌だと言うが、性に合っているのかもしれない。
金塊は私達に、何を齎してくれたのか。あの血みどろ争奪戦から、数年経った今でも分からない。その後、他の皆がどうなったのかも――知らない。
小樽から始まった旅路の終着点。日本を飛び出し、異国で暮らすことになるとは。数年前の私は、考えもしなかった。人生とは、何が起こるか分からない。
今の私は小さな診療所で、看護婦として働いている。看護婦と言っても受付、カルテ整理、診療補助が主な仕事だ。院長の助手が近しいかもしれない。小樽の軍病院と比べれば、長閑な場所だ。
「尾形さん。旦那さんが迎えに来たよ」
刻々と夕焼けが深まる時間。奥の部屋でカルテの作業をしていると、白髪混じりの院長がやって来た。
「あ……」
受付の方角を覗くと、右目に包帯を巻く尾形さんの姿が見えた。
「今日は上がって良いよ。旦那さんを待たせちゃ悪いからね」
院長は、目尻の皺を深めて笑う。
「すみません、ありがとうございます。お疲れ様でした」
私は院長の言葉に甘えることにした。白衣を鞄に詰め、受付にいる尾形さんの元へ向かう。
私と尾形さんは夫婦ではない。当然だが、祝言も挙げていない。尾形さんは天涯孤独だし、私は家族から出奔した親不孝者だ。互いに親族はいないも同然。祝言を挙げて、夫婦になった証を示す相手もいない。
そうは言っても、男女が同じ屋根の下で生活するには不都合が多い。だから表向きは、夫婦ということで通している。それについて、彼がどう思っているか分からない。私も無理に踏み込むつもりはないのだが。
そもそも私達は、患者と看護婦だった。互いに金塊争奪戦へ、身を投じる理由があっただけ。争奪戦が終結した今、こうして共にいる意味は失った。今の私達の関係に、明確な名前はない。あやふやなのだ。
「お待たせしました。帰りましょう」
尾形さんは無言で、私を一瞥してから扉を押す。カランと乾いた鈴の音と共に、私は氷点下の外気に身を震わした。羽織ったショールを巻き直す。北海道出身でも、寒さには慣れない。
尾形さんが右目を失くしてから、右側は私の定位置になった。空っぽな眼窩には、精巧な義眼が嵌められている。時々眼窩から義眼が零れ落ちるので、外出時は包帯を巻くようお願いした。
長年染みついた職業病の癖で、彼の手を取る。初めは嫌がられたが、今では何も言われることはない。慣れたのか――はたまた諦めたのかもしれない。
「珍しいですね。尾形さんが迎えに来てくれるなんて」
「砂糖、もうないだろ」
「ああ、そうでした」
すっかり忘れていた。どうやら尾形さんは、砂糖を買うついでに迎えに来たらしい。どういう風の吹き回しだろうと思ったけど――合点がいく。尾形さんらしいなと思わず小さく笑えば、不可解なものを見るような視線を感じた。
「今日は、お客さん来ましたか?」
「ぼちぼちな。どいつもこいつも、銃の扱いが雑だ。馴染みの客が、壊れた銃を修理してくれってな」
尾形さんは勝手気ままに、銃砲店を営んでいる。軍から引き払われた銃や火薬を買い取り、店で売っているのだ。
狙撃が得意で旅の道中は、よく獲物を獲って来てくれたし、いつも愛銃の手入れを欠かさなかった。彼は銃が好きなのだと誰が見ても明らかだった。銃の扱いが丁寧なので、店は街でも評判らしい。ある意味、彼にとって天職かもしれない。露西亜語も話せるから、露西亜人のお得意様もいるほどだ。
私は未だに露西亜語が分からない。挨拶程度が関の山。だから用事で日本人街を出る時は、尾形さんがいないとままならないのだ。
※
以前、露西亜料理の食材を買うためウラジオストク市中に二人で出かけた時があった。食料品店の露西亜人店主から、話しかけられたのだ。
「Вы супружеская пара?」
私が困っていると、尾形さんは流暢に店主と話し始める。
「да.Это для чего?」
「невежливость.
Некоторое время назад
это казалось близкими
отношениями.」
「Благодаря жене я могу жить без неудобств.」
赤髭を蓄えた店主は、もう一つビーツを渡してくれた。私は拙い発音で、ありがとうと言う。ちゃんと伝わったか不安だったが、主人はにこりと笑い、私達を送り出してくれた。
「何を話していたんですか?」
「大した話じゃねぇよ。おまけにビーツやるから、どうもって話しただけだ」
「……そうですか」
尾形さんは私への扱いが雑な時がある。彼は猫みたいで、ちょっとツンケンしている。
「私も尾形さんみたいに、露西亜語が話せるようになりたいです」
「名前は話せなくても良いだろ」
尾形さんは、髪を撫でつけながら言う。自分の優位性を誇示したい時や、落ち着きたい時によくやる仕草だ。彼の癖みたいなものだが、きっと本人は気づいていない。無意識なのだろう。
「露西亜語が話せるようになれば、色んな方々と交流も出来るようになるから、きっと楽しいと思うんです」
「一朝一夕で言語の習得なんか無理だぞ。日本語とは文法と発音がまるきり違う」
「わ、分かってますよ! だから尾形さんに教えてもらいたいなって思ってるんです」
まるで、お前には習得は無理だと言われたような気がした。大人気ないが、ムキになってしまう。
「だから俺が通訳すれば、話は済むじゃねぇか。あの診療所も露西亜人が来ることはほとんどないし、露西亜語が話せなくても普段の生活だって困ることもないだろう」
「……いや、そうですけど……そういう意味じゃなくて」
「じゃあどういう意味だよ」
暗い瞳が私をじっと見つめてくる。まるで深淵の底を覗いている錯覚に陥る。日本人街に住んでいる限り、尾形さんの言う通り露西亜語が出来なくても日常生活に支障はない。とは言え、異国の地だ。その土地の言葉を多少なりとも話すことが出来れば、色んな人達と交流が持てるだろうし世界は広がるはず。
「何か……怒ってます?」
「俺が? 怒っているのは、名前だろう」
これ以上話していても進展せず、平行線のまま。どうして頑なに首を縦に振ってくれないのだろう。尾形さんは、私が露西亜語を話せるようになることが嫌なのだろうか。
「もう良いです。尾形さんって意外と頑固なんですね」
「頑固なのはお前の方だ」
はぁと溜息を吐いて、すたすたと先へ歩いて行ってしまう。私達は一言も喋らず、ピリピリした空気のまま帰路に着いたのだった。
後日。言われっ放しは悔しいので、私は本屋で二冊の本を買って来たのだ。これがあれば、尾形さんに頼らなくても大丈夫。ペチカのそばで静かに読書中の尾形さんへ、私は買った本を得意気に見せつけた。
「見てください」
「何だよ、その本」
「露西亜語の本と辞書です。尾形さんが教えてくれないから、これで勉強しようと思って」
「まだ諦めてなかったのか」
彼はじろりとそれらを一瞥するだけ。すっかり興味が失せたのか、再び手元の活字本へ視線を落とす。
「……勝手にしろ。俺は教えんぞ」
「良いですよ。独学で頑張りますから」
言葉とは裏腹に、尾形さんの顔は不機嫌な色が浮かんでいた。キリル文字を覚えたり名詞に性別があるところまではどうにかなったが、一人では限界がある。早々に挫折したことは記憶に新しい。尾形さんは、ほらなと満足気に言った。
※
食料品店で砂糖を購入すると、尾形さんが袋を持ってくれた。雪深い帰路を歩く。連日降り積もった雪は固くなり、ブーツで踏み締める度に、ぎゅぎゅ、と音が鳴る。
街から少し離れた静かな場所に、私達の借家がある。無人で荒れ放題だったので、大家さんから安く借りることが出来た。私達が暮らす家は、今ではボロ屋の面影すらない。人の手が加われば、家も蘇るのだ。
身体がすっかり冷え切った私達は、ペチカでゆっくり暖められた空気に、ホッと息を吐く。
「夕飯は鴨の煮込み料理にしましょう。大家さんから頂いた野菜と、尾形さんが獲った鴨肉が残ってるから」
狙撃手の性なのか。今でも雪深い山奥に出かけ、鹿や鴨などの獲物を獲って来るのだ。一人でふらっと行って、数日戻らないこともあれば、数人の同好会で行くこともある。意外にも尾形さんは、この地に馴染んでいるのだ。
金塊争奪戦を経て、何かが吹っ切れたのだろうか? 彼が生きづらさを感じてなければ良いのだ。余計なお世話だと言われそうだから、黙っているけれど。
さっそく私は、夕飯の支度に取りかかる。下拵えした鴨肉を、一口大に切っていく。大家さんから頂いた沢山の野菜を切る。尾形さんは、椎茸が嫌いなので入れない。鍋に調味料を入れて、つゆを作る。
尾形さんは、居間から私の様子をじっと眺めていた。最初の頃は、底が見えない黒い瞳で調理工程を観察されて落ち着かなかった。慣れとは恐ろしいもので、今では日常の光景と化している。
「あれ……? 尾形さん?」
あらかた支度も終わり、居間に行くと尾形さんの姿は見当たらない。右目に巻いた包帯が、テーブルの上にぞんざいに放置されていた。いつもペチカの前から動かないのに、どこに行ったのだろう。ペチカの釜を覗けば、赤味を帯びた炭が残ったまま。外に目を向けると、再び雪が降り始めていた。しんしんと降り、とても静かだ。
尾形さんは外のデッキから、だだっ広い野原の雪景色を眺めていた。雪解けの季節が来るまで、真白な光景が視界に広がっている。
尾形さんは、雪景色がよく似合う。色白の肌に、真黒な髪と瞳孔が映える。彼に触れようとすれば、雪のように溶けて消えてしまいそうな一種の儚さを覚えてしまう。思い返せば彼と初めて会った時も、雪深い真冬の夕方だった。本当に遠い異国の地まで、来てしまったんだなと今更ながら思う。
「風邪引いちゃいますよ」
そっと、彼に声をかける。尾形さんの耳許は、寒気に曝されて少し赤くなっていた。いつから外にいたのだろう。音も立てず移動とは、本当に猫だ。
すると彼は――雪粒が零れ落ちるように――ぽつりと言葉を発する。
「俺が生まれた日も寒くて、雪が降っていたそうだ。覚えちゃいないが」
「生まれは、浅草でしたっけ」
「ああ。ばぁちゃん曰く、小さな妾宅だったらしい。物心つく頃には、茨城で暮らしていたから、浅草に思い入れはねぇな」
「ところで……尾形さんの誕生日って、いつなんですか?」
「……一月二十二日」
「今日じゃないですか。どうして言ってくれないんです?」
「言う必要ないだろ。特別な日でもあるまいし」
「そんなことないですよ! 尾形さんがこの世に生まれて来てくれた日です。大家さんから聞いたんですが、近頃は数え年じゃなくて、その人が生まれた日に祝うって」
大家さんは、子供の誕生日にプレゼントを贈ったらしい。私がそう言うと、尾形さんは少し呆れていた。生まれた日に祝うことが、あまりピンとこないらしい。そんな態度を取られるのも、分かっていたけれど。
すると、大きな溜息と共に質問された。
「じゃあ教えたら、名前は何かしてくれたのかよ」
「尾形さんが欲しい物は何ですか?」
「欲しい物はない」
「じゃあ、好きな食べ物は?」
「……ここじゃ鮟鱇は獲れない」
「鮟鱇以外で、好きな食べ物は何ですか?」
尾形さんは、急に黙ってしまった。他に好きな食べ物を考えている――ようには見えない。答えに行き詰まり、困惑している子供の姿にそっくりだ。いつもなら下らないと言って会話を終わらすのに、一体何が彼の琴線に、触れたのだろうか。珍しくも、私の質問に沿う答えを探しているようだ。
「……俺が獲った獲物を、料理して食ってくれるだけで良い」
長い沈黙の後、彼はそう言った。必死で探し出した答えだ。まるで子供みたいな拙い物言いは、何だか寂しさを孕んでいる。彼の生い立ちが、暗い影を落としているのだろう。
尾形さんは以前、自身の家族について話してくれたことがある。妾の子供故に、父親から母子共々見捨てられた。腹違いの弟へ、羨望と嫉妬を抱いた。父親から無視されて、呪詛を吐かれた。
殺鼠剤で母を殺し、戦争の最中で弟を撃ち殺し、割腹自殺に見せかけて父を殺した。尾形さんの背後は、甘くて芳しい死の匂いに満ちている。軍病院に勤めていた頃、死が間近に迫っていた患者から、嫌というほど嗅いだ匂いに似ているのだ。
彼の所業を聞いた時、私は何を思ったか。身体は震えていなかった。恐怖。哀憫。同情。どれでもなかったと思う。
尾形さんが凶行に及んだ理由は、生い立ちを考えると何となく見えてくる。外見は大人だけど、心が大人に成り切れていない。母親を殺めた子供の頃のまま。
これが尾形さんなのだと、ただそう思った。彼の手に乗せられて、それなりの罪を犯した私が見た世界。境界線から一歩踏み出せば、今までとは違う景色が見えるのだ。
「……分かりました。また鹿とか兎とか、獲って来てください。美味しいご飯を作って、待っていますから」
尾形さんは、いつものように髪を撫でつけていた。恐らく私の答えは、間違いではなかったみたいだ。いつか私が知らない内に、尾形さんの地雷を踏んでしまったら。
ぽっかり堕ちた左目と、生気が失われた右目。まるで彼の顔は、生と死が混在しているみたいだ。全ての感情を削ぎ落とした亡霊が、私を見下ろしているだろう。そして冷たく硬い銃口を、私の額に突きつけているかもしれない。
愛を疑い、愛に飢えている。相手を殺めることで、それを見出そうとする人だから。
尾形さん、と呼びかける前に――口を閉じた。
「百之助さん、と呼んでも良いですか」
尾形さんは、虚を突かれたみたいだ。いつも大きな瞳孔が、小さくなっている。例え彼が覚えていなくても。確かに愛された証拠がある。誰しもが、生まれて最初に貰う素敵な贈り物。そんなことを言えば、彼は不安に駆られてしまうだろう。
だから最もらしい理由で、本音を着飾ってみる。
「表向き夫婦のふりをしているのに、ずっと尾形さんって呼ぶのは、おかしいかなと思ったので」
「ははっ、今更かよ。俺はずっと、お前のことを名前って呼んでいたぜ」
「すみません。お名前を呼ぶ機会を、すっかり逃してしまいましたね」
「寒い……」
尾形さんは身震いした後ぽつりと呟いて、のっそりと家の中に入ってしまった。どうやら、お話は終わりらしい。百之助さんと呼んで良いのか、答えが聞けなかったけど、あの雰囲気なら恐らく名前で呼んでも良いだろう。もし嫌なら、嫌味の一つや二つ言うはずだから。
身体も冷えてしまったし、そろそろ夕飯を温めよう。私は小鍋をペチカの釜に入れた。台所に戻り、他の小鉢料理を作り始める。家の中は、包丁が食材を刻む小気味良い音だけが響く。
真冬の露西亜は寒い。悴む両手に息を吹きかけて温めていると、背中に適度な重みを感じた。そして人の体温に、すっぽり包まれる。甘くて芳しい匂いは、翳りを帯びて掴みどころがない。そして私は、彼の纏う匂いに落ち着いてしまうのだ。
低音で掠れた声が耳許で響く。
「なぁ、露西亜語は諦めたのか? せっかく買った辞書と本が泣いてるぞ。俺が教えてやっても良い」
「どういう風の吹き回しですか? 教えないって仰ってたのに」
「……気が変わった。ほら、頼めよ。露西亜語を教えて下さい、旦那様って」
「じゃあ、あの時どんな話をしたのか教えて下さい。そしたら、言います」
百之助さんは、押し黙る。ぷつんと、会話が途切れてしまった。
「あの時、百之助さんは何と仰ったのですか? 私はそれが一番知りたいです」
「……分かった。今度、教えてやるから」
私が更に畳みかけるように尋れば、どうやら百之助さんは観念したみたいだった。
「本当ですか?」
身を捩って後ろを向けば、百之助さんの大きな目と合う。本当は教えたくないんだろうなと、すぐ分かる程、嫌々そうだ。
「じゃあ、私に露西亜語を教えて下さい。百之助さん」
「名前。……もう一回、呼んでくれ」
「……私に露西亜語を――」
「違う。その後だ」
「百之助さん?」
「もう一回」
「百之助さん」
「……良く聞こえねぇよ」
「……百之助さん」
本当は聞こえてますよね、と言う前に彼の両手が私の腰に回された。まるで何かに縋るみたいに、ぎゅうと抱き締められる。百之助さんは、私をじっと見つめていた。
「名前」
「百之助さん。何度でも……あなたの名前を呼びますから」
百之助さんに殺されない限り――今ある小さな幸せを、これからも大事にしたい。あの金塊争奪戦を生き抜いたのだ。大金持ちになりたい、権力者になりたいなどの大層な夢はない。残された時間は、純朴な暮らしが出来れば良い。それくらい願っても良いだろう。
仮初の夫婦を続けたら、いつの日か本当の夫婦になれるのだろうか。例えその日が来なくても、共に長生きしましょうね。
偽物だって美しいから
(※)
Вы супружеская пара?
あなた達はご夫婦ですか?
да.Это для чего?
ああ。それが何だ?
невежливость.
失礼。
Некоторое время назад
это казалось близкими
отношениями.
仲睦まじく見えたので。
Это достойная жена.
甲斐甲斐しい奥様ですね
Благодаря жене я могу жить без неудобств.
妻のおかげで、不自由なく生活できている