同じ空の下で | ナノ


『何にもないなぁ』


生い茂る草を掻き分け、四方を見回した。だが何処を見ても木、木、木。目新しいものは何もない。旅がこんなに大変だなんて思わなかった。


現在あたし達は根なし草の生活を送っている。きっかけは数日前に起こったある事件。
式神が取り憑いたことにより無人車・人間が暴走し、都内に甚大な被害をもたらした。だがその事件を通してあたしは皆と共に奈落を追う覚悟を決めた。またその際、蛮骨との間に生じていたすれ違いも解消し、二日前に寺を出たのだった。
しかし、いざ旅に出たはいいが何から何まで自給自足。今まで屋根の下で何不自由ない生活をしてきたあたしにとってきついの一言。


『犬夜叉達、凄いなぁ。あたしがこの時代に来るより前に旅してたんだよね』


今度かごめちゃんに色々聞こう、うん。そう言っては一人頷いた。


『ってかさぁ…誰か反応してェ!』


薄暗い森の中、たった一人声を上げる。当然応えてくれる者などいない。
そもそも何故一人、森の中を彷徨っているのだろうか。全ては小一時間ほど前に遡る。




新たなライバル





時を遡ること一時間前。
蛮骨を先頭に森の中を突き進んでいた七人隊。ある時、蛮骨は突然立ち止った。深刻な顔をする首領に皆の緊張感が高まり、そして遂に首領から直々に通達が――。


「腹減った!」


その時、七人全員が盛大にこけた。


『は!?』
「腹減りすぎて死にそうだ」
『……あ、それなら!』


あたしはリュックの中を漁る。旅のために現代で食料などを詰め込んでおいたのだ。


『確かこの中にインスタントラーメンが…あれ、おっかしーな。食べ物が無い。確かに入れたはずなのに』


食料の所在を皆に尋ねると、全員が顔を横に振る。だが、その中にかなり怪しい動作をする者が…。蛮骨と蛇骨は二人、ヒソヒソと会話をする。その額には尋常ではない冷や汗が浮かんでいた。


「大兄貴、唯が言ってるのってもしかして今朝食った麺のことじゃねぇか?」
「やべぇな。蛇骨、何としてでもシラをきり通すぞ」
『アンタ達…?』


ビクリと体を震わす。顔を上げた時には唯は既に二人の前に仁王立ちをしていた。しかも修羅のような恐ろしい表情を浮かべて。


『食べたんだ』
「いや、それは…なぁ、蛇骨?」
「何で俺に振るんだよ!唯、これは違うんだ!」


必死に弁解する二人だったが、その時唯の目がカッと見開かれた。その後、森の中に男二人の叫び声が轟いたのは言うまでもないだろう。




『んで、どーすんのよ』


唯は手を鳴らしながら溜息をついた。表情はまだ怒りに満ちている。その隣で煉骨は顔を引きつらせながら遠慮がちに口を開いた。


「仕方ねぇ。手分けして食い物探すか」
『こんなとこに食べ物あるかな』
「分からねぇが、じっとしとく訳にもいかねぇだろ。ほら、手分けして探すぞ!」


煉骨の言葉を合図に全員は四方に散らばる。そうして今に至るのだった。

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