log (〜2012) | ナノ




「よかったわねぇ、本当に…」
『何よ、かごめ。ニヤニヤして…』
「分かってくせにー!今朝から彼氏の話題で持ちきりじゃない!」
『…ああ、そのこと』

目を煌めかせて何を嬉しそうにしているのかと思えばそういうことか。
確かに、今朝から学校はある話題で持ちきり。何かというと、あれだ。彼の謹慎が無事解かれたのだ。
あれから二日ほど経って、喧嘩の現場を目撃した人物が現れたらしい。彼が一度も手を出さなかった、その証言が謹慎を解く直接のきっかけとなった。また、彼が謹慎を解いてほしいと先生に直接掛け合ったことも幾分効果があったようだ。
…本当によかった。

「ねぇ、早速学校で会う約束とかしてるの?」
『し…してないよ!』
「え、じゃあ…」
『あー…私、今日パンだから売店行ってくる!!』
「ちょっと!まだ話は終わってないわよー!」

折角平常心を保っていたのに、このままでは顔が緩んでしまうのも時間の問題。そう思った私は逃げるように教室を飛び出す。
しかし、廊下に出てみても彼の話題は絶えなかった。きっと卒業するその日まで彼は噂のあいつとして皆の注目の的であり続けるのだろう、そう思ったらフ…と笑みが零れた。



『よし…!』

売店の前までたどり着いた私は準備運動として屈伸を数回行う。そうして間もなく幕を開けるだろうパン争奪戦に備え、毅然たる態度で売店の扉を開いた。だが、

『……あれ』

私の意気込みは呆気なくも消失してしまう。目に飛び込んできたその光景に驚かずにはいられない。何しろいつも生徒で溢れる売店はガランと静まり返り、客は男子生徒一人だけ。
…何だかこれと似たことが前にもあったような気がする。しかしまぁいい。これはこれでチャンスに違いないのだ。今のうちにと唯一の客である男子生徒の隣に並び、昼ご飯になりそうなものを物色し始める。

『(あっ、これ…!)』

ショーケースを見回すと、目に留まったのは伝説の焼きそばパン。再びお目に掛かれるとは…有難や有難や。心中で神様に感謝の意を述べ、焼きそばパンへ手を伸ばす、

「おい、肩に蜘蛛が乗ってんぞ」

聞き覚えのある声。聞き覚えのある台詞。
声の主が誰かなんて、そんなの今更。
私は彼に悪戯な笑みを向けた。


噂のあいつ
おさげ髪にご用心!

(もうその手は通じませんよ?)
(ちぇっ、んだよ)
(ふふっ………おかえり、蛮骨)
(…ただいま)


fin.


(後書き)

完結しましたァ!わーいわーい!
去年の四月より拍手お礼文として連載を始めてから十か月…漸く、漸く最終話を迎えることができました。これも執筆した度拍手をくださった皆さま、噂のあいつが好きだとお言葉をくださった皆さまのおかげであります!
当初五話で終えるはずがここまで長くなってしまったのは想定外でしたが。やり遂げられて本当によかった…。
ここまでお付き合いいただいてありがとうございました!


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