log (〜2012) | ナノ


毎年この季節になると、街はクリスマス一色。お店はサンタや雪だるまの飾りがなされて、店員さんは皆サンタの帽子被ってたり、中には全身サンタだったり…。それを見ているだけで実感が湧いて、少し楽しくなったりする。だけどそう思うだけでおしまい。非日常的な事が起きるわけでもなく、あっという間に過ぎるクリスマス。
だけど、今年はいつもとは少し違った。


クリスマス当日。今日のために手作りしたケーキを持って、彼のもとに急ぐ。

『蛮骨!』

勢いよく襖を開けると当然のようにいる彼、蛮骨は驚いた顔をした。それもそのはず、あたしが着ていたのはサンタ衣装のワンピース。しかもミニスカート。全ては彼を驚かせたいがために準備したもの。あ、ちょっと嘘。自分が着てみたかったのも少しはある。

「どうした、その格好」
『どう?似合う?』

くるりと回って見せると蛮骨はあぁ…と頷いた。ただ一つ予想外だったのは、その時の蛮骨が少し照れたような顔をしていた事。普段そういう感情を表に出さない人だから、何だか自分が恥ずかしくなった。とにかく話題を変えようと早くも手に持った箱を差し出す。

『今日ね、ケーキ作ってきたんだ。蛮骨と一緒に食べたいと思って…』
「…けぇき?」
『うん、ほら!』

箱を開けると、小さいホールのショートケーキが現れる。初めてにしては結構自信作。勿論、初めて見る食べ物に蛮骨は興味津々。まるで子供みたいに目を輝かせて見てる。そして白い生クリームを口に運ぶと一層目を輝かせた。

「うめぇ…!」
『本当!?』
「おー」

そう言って無心でケーキを食べる蛮骨を見て、思わず笑顔が零れた。その後は二人でケーキを食べたけれど、蛮骨が予想以上に食べたこともあってあっという間に完食してしまった。

「もうねぇのか?」
『まだ食べたかった?』
「そうだな…。でもいーや」
『…え?』

急に目の前が真っ暗になった。何だろうと思っていると不意に口の端に少しついていた生クリームを舐めとられる。すぐ近くには怪しく笑う蛮骨の顔があって…、

「一番喰いてぇのはまだここに残ってるし…?」
『え…?…んっ』

彼の唇があたしのに軽く押し当てられた。
あ…甘い香りがする。じゃないや、なんでそうなる。

『な…何でっ!?』
「何でって、そんな格好して誘ってたんだろ?」
『そんな訳ないでしょ!あたしはただ…』
「聞こえねーな」
『そんなっ…』

そんなつもりで着てきたんじゃないのに〜!
この変態め!
反論して逃れようとするけれど、いつの間にか壁まで追い詰められていて…息が触れるくらい至近距離で見つめられると、反論は無理だと悟った。

「真っ赤でうまそ…」
『〜っ!』

赤く染まった頬に口づけられて、更に赤くなる。
真っ赤なサンタのワンピース…、恐らく今後一切彼の前で着られることはないだろう。やっぱり普通が一番!今回で早くも懲りてしまったあたしだった。


おいしい誘惑
非日常は命取り。


(自分から誘ったからには最後まで付き合えよ?)
(だから、誘ってないってば…!)


fin.

2011/12/24

prev / next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -