理科室の扉を開けた瞬間、麦わら帽子で視界を遮られた時は、確かに足は地の感触を捉えていた。宙を浮く感覚が襲ったのは手首を掴まれてから直ぐの事で、上空に持ち上げられた身体は、風の抵抗で動けなかったのを覚えている。気が付けば足はまたもや地を踏んでおり、いつの間にか見張り台の上に移動をしていた。

「………」

考えを纏めると以上の様な結果と成るわけだが、推察するにどう考えてもそればっかりはありえなかった。
近年男性の弱体化が進み、細身とは言え女子一人分を軽々と持ち上げられる人工は少ない。それも片手なら尚更だ。
更に不可解なのが持ち上げられたあの瞬間。把握した限り、回りには上に登る為の手を掴めそうな階段も梯子も見当たらなかった。では、どうやって登ったのか。訂正、男はどうして上まで登れたのか。

「………」

男の出で立ちに周囲の人間。景色と風景を総合すれば答えは出ている様なものだったが、考えたくもない最悪の結論になりそうで嫌だった。

ん?いや、そもそも疑問を抱いてはいけない話題だったんじゃなかろうか

「…とにかく、貴方は誰なの?」
「………、てっ、へ?あの、私ですか」

今の今まで口論していた女性が突然こちらに話題を振った。まるきり蚊帳の外だったので反応が遅れてしまう。気にはされていないようだが、あの、ちょっと、そんなキラキラした目で見ないで下さい船長さん!
タンクトップに半ズボンの男(の子か?)の目が何故だか期待で光っているのが解り、たまらず視線を反らしてしまった。
と言うか、早々に船長だと決めつけてしまった己に絶望した。コスプレと定義するならば、服装からして大海賊時代の船長役であっているだろうが、船長=リーダーの方程式を使うなら、やはり船長役を演っている人がリーダーだと決めつけるのは良くはないだろう。うん。そうだ。そうに決まっている。

「あの、えっと…はい。その前に、お手洗い借りてもいいですか?」
「お手洗いぃ〜?」

女性が完全に不審者を見る目付きで若干怖い。怯むな臆するな負けるんじゃない!言い聞かせて首を縦に振った。

「あ、あの、終わったらきちんとお話しますから、何だったらそこで小躍りかましてる男性についてきてもらってもかまいませんので…ね?」
「………」

ううっ。笑って告げるが語尾のトーンが段々低くなる。
見てる。見られてる。完全に値踏みをされている。

「…まぁ、サンジ君ならいざってなっても大丈夫でしょ」

別の問題はありそうだけど…

「はい?」
「なんでもないわ。サンジ君、この子をお手洗いまで案内してあげて。いい、変なことはしちゃダメよ」

あの、それってどう言う意味ですか。最後の言葉が自分にではなく、グルグル眉毛の男性に向かって告げられた物だったので、口許が軽く引きつった。







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