さてと、どうしてあげようか






「カカシ、どうしたんだ!?」

アカデミーから帰ってきたカカシは多少の傷には見慣れた自分でも驚くほどに傷だらけで。

「べつに…なんでもないよ」

プイッとそっぽを向かれたからといってそう簡単に引き下がるわけにはいかない。

「何でも無いはずがないだろう?こんな、全身…とりあえず手当てしよう」

カカシをそこに立たせたまま救急箱を取りに行き、ついでにタオルを濡らしてからカカシの所に戻った。

「ほら、シャツ脱いで」

大人しく袖を抜いたカカシの腕を掴む。
細くて白い肌に痛々しく走る紅い傷に慎重に消毒液を塗っていった。

「っ…!」
「沁みるか?」
「…へいき」

まだこんなにも小さな子供なのに、泣きもしないで我慢するのが父親としては余計に辛い。

「ねぇカカシ。何をしてたんだい?」
「……しゅりけんのしゅぎょう」

手裏剣の修行って…普通は投げてするものだろう。
こんなに傷だらけになるはずが……

「もしかして……誰かに手裏剣を投げられたのか?」

顔も、腕も、脚も。
身体についてるのは全て切り傷で…

「そうなんだな…?」

否定の言葉は出ずとも、この無言の間が肯定の意味を示していた。

クラスメートの中でも極端に年齢が低い。
当たり前の様に体も小さい。
それでいて、親の贔屓目無しに見てもかなり才能はある。

妬まれたり、多少の嫌がらせがあるであろう事は入学前から予想していた。
だが、それにしたってこんな……一歩間違えばカカシは今ここにいなかったかもしれない。

そんな事を笑って済ませられる程、寛大であるつもりはなかった。

「怖かっただろう…?」
「だいじょうぶ」
「我慢するな。カカシ、忍っていうのはね?仲間を大切にしないといけないんだよ。大事な仲間に向かって手裏剣を投げつける様な奴は絶対に忍になんてなれない。わかるか?」
「うん」
「感情を表に出すなとか、涙を見せないとか…規則で決められていても、守るのは結構難しいんだ。」
「うん…」

カカシの声が、少し震えた。
全ての傷の消毒を終えて、その小さな身体を抱きしめた。

「忍には決まり事がたくさんあるけど、こんな時は少しくらい破ってもいいと思うよ?」

もう、返事は無かった。
シャツの裾をギュッと握る小さな手のひらと、グスグスと鼻を啜る音。
わずかに震える体が、カカシがどれほど怖かったかを伝えてくる。
無言で背中を擦ってやって、カカシが落ち着くまでずっと抱き締めていた。






泣き疲れてそのまま眠ってしまったカカシを布団に横たえ、静かに身支度を整える。

「さてと、どうしてあげようか」

怒りで震える体を無理矢理抑えながら呟く。
二度と最愛の息子をあんな目に合わせない、と固く決意して、暗くなり始めた通りへと足を踏み出した。





06/04/18

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